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150 名前:オムツタバサ ◆qrZtCzv0Ak [sage] 投稿日:2006/11/24(金) 17 02 56 ID /QzySgdP 虚無の曜日、トリステインの城下町をタバサと才人は歩いていた。 才人の両手には大量の紙袋にはいった荷物がある。 結論からいうと、勝手に部屋に入った事と、おねしょの事(タバサが悪いのだが)で一日荷物もちをすることになったのだ。 夏の日差しと合わさって非常に重労働だ。 ちなみに、ルイズに関しては、タバサが大きな買い物をしたくて男手が必要なのだと説明して、しぶった顔をしていたが、なんとか了解を得ることができた。 「次はあっち」 大量の荷物に押しつぶされんばかりの才人を尻目に、タバサは次の店へと向かおうとする。 「なんだよ、確かに無断で部屋に入ったのは悪かったけどさ。鍵くらい掛けとけばいいじゃんか……そうすりゃおねしょを見られることも――――いやうそ!何でも無いです」 ぶつぶつと文句を言っていた才人だったが、タバサが杖を握り締めて振り返ったのを見て口を噤んだ。 結局、丸一日を買い物に費やすこととなった。 太陽はもう傾いている。 赤い光を浴び、夕日が目にしみるぜ、などと痺れた両手に力を入れながら思っていた。 そこで才人は、ふと道端の露店に置いてある物が目に入った。 手に持った荷物を置き、それを手にとる。 「お、にいちゃん。目が高いね!それは異世界のマジックアイテムだぜ!効果は……」 「ちょっと黙ってくれ」 説明をしようとした商人を制す。せっかく説明しようとしたのに、気分の悪くなった商人だが、才人のマントに付けられたシュヴァリエの称号を見て何も言わないことにした。 才人は手に取ったそれを確かめる。外側は防水性に優れた素材で覆われているが、内側には肌触りのよい柔らかい透水性素材。 おおおおおおちつけ才人、こういう時には素数を数えるんだッ! 急に立ち止まった才人を、タバサは怪訝に睨む。サイトのマントをくいくいと引っ張り、行こうと意思表示をする。 「あ、あぁ、悪いちょっと待ってくれ。おい、おやじこれ売ってくれ」 シュヴァリエの年金で得たお金をポケットから取り出して商人に渡す。 「へぇ、……旦那も好きですねうへへ」 商人は、才人とタバサに交互に目をやり、にやにやといやらしい笑いをしながら商品を紙袋につめた。 151 名前:オムツタバサ ◆qrZtCzv0Ak [sage] 投稿日:2006/11/24(金) 17 03 33 ID /QzySgdP 学院に戻ると、すでに日は暮れていた。二人はタバサの部屋に戻り、買ってきた荷物を床に置く。 食事の時間も過ぎ、あとはもう寝るだけである。 そこでタバサがようやく労いの言葉を発した。 「今日はありがとう」 この言葉だけで感無量である。いや、決して俺はロリコンじゃないよ?自分より幼い子の喜ぶ姿は好きだけどロリコンじゃないよ? そこで才人は意を決したようにタバサに質問した。 「タバサ、聞きたいことがある。前に俺が見てしまったアレのことなんだけど、頻繁にあるのか」 タバサは何も言わない。部屋の温度が3℃ほど下がった気もするが、気のせいだろう。 「いや、別に貶してるわけじゃないんだ。ただ、もしそうだとするなら俺に解決策がある」 その言葉にタバサはピクっと反応した。 これはいける!言え、言ってしまえ俺! 「実はこれなんだけど」 そこで才人は先ほど露店で買った物をタバサに見せる。 「これは俺の世界のマジックアイテムで、これを装着していればもうアレに悩まされることは無いんだ」 いつの間にかタバサは興味津々に、才人が手に持ったそれを見つめている。 「本当?」 「本当!」 「じゃあ着けてみる」 「いや、ただ、これを装着するには非常に困難な手順がありまして、その……なんていうか……俺にしか無理なんです!」 「あなたに従う」 ベッドの上で、下半身に何も付けていないタバサが寝そべっている。 才人は、手に持ったそれを丁寧に開封する。 実は詳しい付け方なんて知らない。けれど、手に持ったそれを強く意識すると、左手のガンダールヴの証が輝きはじめた。 なるほど、これもある意味武器だ。こういう物を使って興奮する大人だっている。いや、俺は違うけどね。 そういう人種にとっては、効果抜群の武器だろう。 使用方法がはっきりと脳に浮かび上がってくる。 タバサに腰を浮かせるように足をそろえて持ち上げ、それをもぐりこませる。 次に足を開かせ、三分の二ほど残った部分をへそ少し下のあたりまでかぶせる。 最後にお尻のほうにあるマジックテープを、腹部の両端で留めて完成だ。 「こここ、これで完成です」 ベッドの上には、オムツ姿のタバサが寝そべっている。 装着されたオムツをぺたぺたと触りながら、本当にこれで大丈夫なのかと思っているようだ。 「じゃ、じゃあ俺はこれで、あああ朝にまたくるよ」 部屋を出て行こうとした才人を呼び止める。 「サイト………ありがとう」 才人は部屋を出たその足で、オムツ姿のタバサを目に焼き付けて、トイレの個室に駆け込んだ。 152 名前:オムツタバサ ◆qrZtCzv0Ak [sage] 投稿日:2006/11/24(金) 17 04 39 ID /QzySgdP 彼はああいったけど、本当にこれで大丈夫なのかな。 自分の下半身に着けられたそれをぺたぺた触りながら思った。 彼が部屋を出て行こうとする。 恥ずかしい格好させられたけど………うん、私のことを気遣ってくれたんだし、わざわざ自分のお金で私に買ってくれたんだし。 「サイト………ありがとう」 とだけ言っておいた。 パジャマに着替えてベッドに入る。 下半身に違和感があるけど、アレをしちゃうよりはマシだ。 そう思いながら眠りについた。 その夜、また夢を見た。 ラグドリアン湖で私と彼が遊ぶ夢。 親友のキュルケもいる。 彼の主人も、薔薇を口にくわえた金髪も、同じ金髪の縦巻きロールも居る。 岸辺では喋る剣とこっぱげが何か話をしている。 沢山の気が置けない人たち。その中で、私も楽しそうに笑っていた。 ひとしきり水遊びを楽しんだところで、目が覚めた。 水の夢を見ると大抵おねしょをしてしまう。 今日も、そうなのかな………、と暗鬱に思いながら布団の中に手を入れてみた。 そこは濡れていなかった。 変わりに彼が着けてくれたマジックアイテムの中が少し暖かい。 お漏らしはしてしまったみたいだけど、布団やパジャマのズボンはまったく被害がない。 すごい!こんな物があるなんて!彼の居た世界の魔学力は世界一ではないだろうか。 そこでドアがノックされた。 ベッドから出てドアを開けると、彼が立っていた。 まだ朝早い時間だというのに、彼は私のところへ来てくれた。 そんな彼の事を嬉しく思いながら部屋へと招き入れた。 153 名前:オムツタバサ ◆qrZtCzv0Ak [sage] 投稿日:2006/11/24(金) 17 06 23 ID /QzySgdP 朝早くに目が覚めた。 何故ならば、俺にはまだ課せられた任務があるからだ。 汝に問う。オムツプレイの醍醐味とは何ぞや。 オムツを履かせることか?否。それはただの過程である。 オムツを履かせることに対する羞恥心?否。俺は決して恥ずかしくない。 オムツを着けた少女の恥じらいの観察?否。この世界ではオムツに対する恥じらいは望めない。 オムツプレイの醍醐味、それは!一晩たって、ぐしょぐしょに濡れたオムツを脱がせるその瞬間である! 自分の放出した尿を見られるという羞恥に満ちた少女の表情を楽しむ事が!! そして汚れた下腹部をきれいに!キレイに!!綺麗に!!!拭きあげてやる事こそがオムツプレイの最大の醍醐味だと言えよう! 装着に関しては誤魔化せても脱ぐのは自分でしてしまうかもしれない。そのタイミングを逃さぬよう、俺は朝早くからタバサの部屋の前で待機する。 部屋の中で音がした、おそらくタバサが目を覚ましたのだろう。 隊長殿!任務を開始します!!生きて戻れぬやも知れません、けれど、やらなくちゃいけないことがあるんだぁぁ、男の子にはぁぁぁぁ!!! 部屋に入ると、タバサをベッドに横にさせる。 ベッドに横になったタバサは、顔を背けて足をひらいた。恥ずかしいらしく、頬に赤みが差している。 これだ!これを見たかったんですぅぅ!俺は! 両側のマジックテープを剥がしてオムツを捲くる。 内側の柔らかい透水性素材の部分が黄色く変色していた。 用意しておいたトイレットペーパーを手に取り、股間に残った雫を丁寧に拭きあげる。 君たちは、オムツを脱がした女の子の処理の仕方をご存知だろうか? こう、一見ただ拭くだけに思われるが、実は違う。 尿のみの場合、下から上へ拭くのだ。そうすることで秘所が汚れなくなる、が、大の時には逆に上から下へと拭かなくてはならない。 理由は言わずもがな理解してくれるだろう。 ん?なんで俺がそんなことを知っているかって? ガンダールヴの能力が教えてくれたんだよっ!! 尿を綺麗にふき取ると、両足を抱えて腰を持ち上げオムツを引き抜く。 折りたたみ、マジックテープで封をしてあとは捨てるだけだ。 それを捨てようとベッドから立ち上がると、タバサに後ろから抱きつかれた。 「今日の夜も、それを着けてほしい」 154 名前:D_K ◆qrZtCzv0Ak [sage] 投稿日:2006/11/24(金) 17 07 44 ID /QzySgdP おもらし小説完結編 やっぱりタバサはお漏らしっ娘!
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871 名前:1/10[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 02 31 18 ID jS7CC32r 昼過ぎから読み始めた本も、直ぐ読み終わってしまう。 難解な魔法書も、タバサに掛かっては普通の本と変わらない速度で消化されていく。 「…………」 残りのページを眺めて、今日中に読みきってしまうか、続きは明日に回すか黙って悩む。 ――結論は直ぐに出る。今日はもう休む。 学院に戻ってからのタバサが床に付く時間は、日に日に早くなっていた。 今日などはまだ夕日が空を染めている最中で、子供でも眠るのを嫌がるような時間だった。 それでもタバサの行動に遅滞は無く、着々と眠る準備を始める。 最近は毎日この時間が楽しみで、日が傾き始めると気付くとこの事ばかり考えてしまう。 寝巻きに着替えると、ランプの火を落とす。 まだ空が明るいので、部屋の中の様子は良く分かる。 この事に気付いてから、タバサは暗くなってから寝る事が無くなった。 小さく口笛を吹く。 使い魔への合図。 薄明るかった部屋が、竜の巨体で窓を塞がれて、真っ暗になった。 「お姉さま、お姉さま、今日も一緒に寝てもいいの?」 「こっちに」 ベットの側でシルフィードを見つめるタバサの頬はほんのり上気し、 毎日の事なのに、振動はうるさいほど高鳴っている。 気付くと目が潤んで、シルフィードがいつもより鮮やかに見える。 「お姉さま、入るのね、入るのね、きゅいきゅい」 「早く」 焦れ始めたタバサが、側に置いてある杖を握りしめると、シルフィードは慌てて詠唱を始めた。 『我をまといし風よ、我の姿を変えよ』 何時も通りの詠唱で、シルフィードの姿が見る見るうちに縮んでゆく。 が、その姿は何時も通りでは無く…… 「お姉さま、今日も可愛いのっ」 「っ…………は……い」 自在に姿を変えられるシルフィードに、『サイト』の姿と声で賛美される。 それだけでタバサは、辺りを駆け回りたいほど幸せだった。 『サイト』の肩に、自分のシュヴァリエのマントを掛ける。 『シュヴァリエ・サイト』の出来上がりだ。 「こ、こっちに……」 「うん、今日も一緒に寝るのー」 夕日に負けないほど赤くなったタバサは、自分だけの『サイト』をしっかりと抱きしめて…… 「おやすみなさい」 872 名前:2/10[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 02 32 04 ID jS7CC32r 「うー、寒っ……」 すっかり暗くなった廊下を、サイトはひたひた歩いていた。 目指すは、サイトの自作風呂。 「やっぱり自分で作った奴の方が、愛着があるよなぁ」 シュヴァリエに成った今なら生徒用の風呂も使えるが、サイトは自分の作った風呂に入るほうが好きだった。 水を張ったり、湯を沸かす手間が掛かるが、 異邦人のサイトにとって、自分だけの物だと感じられるものは貴重だからだ。 「うわっ……風つえーなぁ……」 昼のうちに用意しておいた薪に火を点けるのも一苦労だったが、 手間が掛かる以上、しておいた前準備を無駄にしないためにも、 今日は断固として、自分風呂の日だった。 「今頃、ルイズは風呂だろうしな」 今更生徒用の風呂に向かっている途中に、すれ違ったりしたら…… 「ば、馬鹿にされるしな」 テファを連れて学院に戻ってから、ルイズとは付かず離れずの距離を保っていた。 とはいえ、お互いの選んだ立ち位置では、サイトが圧倒的に有利だった。 なにしろ学院にはシエスタが居る。 シエスタになびく振りをするだけで、ルイズの虚勢はあっさりと看過され、 「かわいーよな」 結果的にはサイトもルイズもどっちもどっちだが。 にやにやと笑いながら、サイトはその辺の木に、自分の服を掛ける。 この風呂のもう一つの欠点として、更衣室が無い事があったが、今のところ困った事は一度も無かった。 「うはーー、幸せーー」 冷え切ってしまった身体を湯に浸けて温める幸せは、何物にも変えがたい。 「あー、このまま死んでもいいやー」 鼻歌など歌いながら、上機嫌に騒いでいるサイトは…… マント以外の服が全て風に飛ばされ始めている事に気が付きもしなかった。 873 名前:3/10[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 02 32 47 ID jS7CC32r 歯の根が合わない。 全裸にマントでは流石に部屋に帰れない。 そう思ったサイトは濡れた身体のまま、辺りを探し回り…… 身体が乾く頃には、すっかり身体は冷え切っていた。 「ひゃ、ひゃむぃ……」 紫色の唇から紡がれる言葉は掠れ、誰かに聞こえたとしても意味の無い呟きとしか取れなかった。 「…………し、しむ……もーふぐ、ひんでひまぅ」 学院の構内で凍死、伝説の使い魔の死に方としてはなかなか最悪だった。 唯一残されたマントの前をしっかりと合わせて、言う事を聞かなくなり始めた身体を一歩づつ前に進める。 誰かに助けを求めたい気もしたが、それは最後の手段。 なにしろ裸にマントだ。 ――助かる前に、通報される。 ――助かったとしても、大評判に! ――最悪いきなり逃げられて、助かるものも助からない。 どう考えても、碌な事になりそうにない。 (だ、誰か……助けてくれ……) そろそろ声も出なくなってきた。 (今寝たら……気持ち良いだろーなぁ) 限界突破! 真っ白になったサイトが崩れ落ちたその時、小さな人影が飛び出して、サイトの身体を支えてくれた。 「どこまで行ってたの?」 (タ、タバサ?) サイトの冷え切った身体に、タバサの体温が伝わっていく。 (……ぅぁ……あ、あったけぇ……) ただただ震えてタバサの体温を貪るサイトの手を、タバサは当然のように引き自分の部屋に連れ込み…… ――廊下には鍵の音が鳴り響いた。 874 名前:4/10[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 02 33 29 ID jS7CC32r まったく事態を理解しないまま、サイトはタバサのベットに横になっていた。 (お、女の子のベット……) ルイズやシエスタと毎日一緒に寝ているとはいえ、 地球にいた頃には望むべくも無いシュチュエーションに、サイトは落ち着かなかった。 混乱するサイトをよそに、タバサは当然のようにサイトの横に滑り込み手を、足を絡めてくる。 「冷たい」 (す、すいましぇん) サイトの声はまだでない。 「背中に手を回して」 (は……はい) お互い抱き合った姿勢のまま、サイトにとって幸せだが居心地の悪い時間が流れていく。 (待て、まて、マテェェェ、俺、なんかしたか? なんだよこのタバサの豹変っぷりはなんだっ! フラグか? フラグが立ったのか? それともモンモンがまたヘンナモノ作ったのかぁぁぁぁ) 「まだ寒い?」 (滅相も無いっ!!) そろそろ喋れそうな気はしたが、声を出すと解ける魔法が掛かっている。 そんな気がしたサイトは、何も喋る事が出来ない。 何も喋らない『サイト』を不思議そうに見ていたタバサが、ふと身体を反転させると、 まだ冷たいサイトの両手を取って、自分の手の中で温めながら…… 「はーーっ」 (っ……) サイトの心臓が高鳴る。 タバサの吐息が何度も何度も、サイトの手を暖める。 「まだ寒い?」 首がもげる。 そんな勢いでサイトの首は左右に振られる。 「良かった」 (か、可愛いじゃねぇぇぇぇかぁぁぁ) サイトがいけない道に旅立とうとしていた。 875 名前:5/10[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 02 34 10 ID jS7CC32r シルフィードの様子が変、そんな気もするけど…… (いつもの事) タバサはそんな疑念を切って捨てた。 『おなか空いたのー』 そう言って何時までも帰ってこないシルフィードを迎えにいった所為で、すっかり目が覚めてしまった。 こんな格好で出歩いて、誰かに見られたら困る。 ……こんな格好のサイトが、こんな時間にわたしの部屋に出入りしてたって…… ……噂が……広がっ……たら…… ……いいかも。 ! 違うの、違うのっ、サイトを独り占めしたいわけじゃないのっ でも……ちょっと位…… ルイズを助けに行くって決めたときのこの人が、 ガンダールヴじゃないこの人が、とても素敵だと思ったから。 わたしは…… なんだか悲しくなってゆく。 どうしてこんなに冷たくなったのか分からないけれど、冷えてきっているわたしの『サイト』 多分本物は今頃ルイズと一緒。 切なくて、切なくて、 わたしにとって大切な、この人との思い出にすがる。 何度もシルフィに言い聞かせて、やっと内緒にする事を約束させた事を宣告。 「久しぶりに、『練習』する」 「?」 練習なんて言い訳、 この間みたいなチャンス、多分もう二度と無い。 でも……『練習』のお陰で、サイトは真っ赤に成ってた。 わたしみたいにぺたんこでも、サイトは『女の子』って見てくれるのかな? この子が本物なら良いのに、そう……思いながら、わたしは『サイト』と唇を重ねた。 876 名前:6/10[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 02 34 51 ID jS7CC32r (にゅあぁぁぁっ、何事ぉぉぉ) 「んっ……はぅ……んんっ……あ……」 無心にタバサが俺の舌を吸い上げる。 『練習』ってこれかぁぁぁ、確かに妙に上手くて、あれから何度か夢に……って (なんだか分からんが、コレはいかん、コレは……堕ちるっ……) どうも誰かと間違われている気がする、そう思ったサイトはタバサの腕から逃れようと、じたばた暴れだした。 が、両手で身体を起こそうとして出来た隙間に、タバサの手が滑り込みサイトの背中を優しく愛撫する。 (ひっ……ちょっ……まっ……) 「うごいちゃ……め、……くちゅ……も……っと……舌……絡めて」 (……………………は……ぃ…………) サイトに馬乗りになったタバサが、小さな身体を擦りつけながら。ルイズが見ていた時には決して見せなかった、 媚と歓喜を含んだ視線でサイトを求めた。 抵抗をしようとしていた手は力を失い、絡み合ったままベットに崩れた。 「気持ち良い?」 タバサの問いに、首を振る事でしか答えられない。 頭の中に流れる言葉は纏めることも、伝えることも出来ないまま、 サイトの中で衝動だけが高まってゆく。 (もっと……) 何も考えられなくなった、いや、気持ち良い事しか考えられなくなったサイトが、 タバサに更なる快感をねだろうと、口を開きかけるが、 タバサの指先がサイトの唇を押さえた。 「喋っちゃダメ」 (……な、なんでぇぇぇぇ) サイトの悲鳴は心の中だけに響いて、 切なげなサイトを満足気に見つめたタバサは、サイトの唇から離れ両手でサイトの胸を擦った。 (って、俺は女の子じゃっ……っっ!) 未知の快感がサイトを襲う、タバサが優しく優しくサイトの乳首を吸い上げ、 唾液で湿した乳首を、親指の腹で苛め始めた。 「っ……っん……っ! ……」 「そう……いい子ね……喋っちゃダメよ」 サイトはいつの間にか、魅入られたようにタバサの言葉に従う様に成っていた。 877 名前:7/10[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 02 35 36 ID jS7CC32r シルフィードの感度がいつもより良い。 卵生のシルフィードは気持ちよいとは言うけれど、この行為の意味をまったく分かっていなくて、 『練習』には成るけれど、味気ない感じがして寂しかった。 冷やしたのが良かったのかな? まるでサイトが感じてくれているみたいで嬉しい。 「『サイト』キスが欲しい?」 コクコクうなずいて、一生懸命わたしにキスをねだる『サイト』 喋るとシルフィードだって分かるから、喋っちゃダメって言ったのは正解だった。 まるで本当のサイトみた……い…… 「あ……れ……」 わたしの目から涙が零れる。 偽物の『サイト』で、自分を誤魔化すしか出来ない惨めなわたし。 シルフィードが本物に近づけば近づくほど、自分の哀れさが引き立った。 今頃……『本物』は……ルイズの……側で…… 「っ……ぅ……いいもん、この『サイト』は…… この『サイト』は、今だけはわたしの……だから……」 ルイズも、メイドも、女王も、エルフも、ここには居ない。 「わたしだって……、サイトを好きだもの……」 驚いた顔をするシルフィードが喋らないように、もう一度キス。 そう言えば、シルフィードにも言ってなかったっけ? 「サイト……好き……」 言葉にすると、想いが胸から溢れそうになる。 決まった相手も、二番目の相手も、きっとそのずっと後まで居る人に、 伝えられない想い。 「愛してる……だから……側に居て……」 すっかり硬くなった『サイト』に、すっかり湿って熱を持った、わたしの一番柔らかい所を擦りつけながら、 いつかの様にキスをする。 苦しげに呻く『サイト』でも、知ってる。 わたしも気持ち良くなれる様に、ゆっくり……執拗に擦り合わせたら…… 「ひっ……だっ……もっ……逝く……」 もぅ……喋っちゃダメって言ったのに……。 でも、今のは本物のサイトみたいだったから、許してあげる。 「喋っちゃダメって言ったのに……どんなオシオキが良いの? 『サイト』」 シルフィードが何を言っても、優しくしてあげる。 幸せな気持ちになったわたしは、『サイト』の耳元で囁いた。 「じ、直に……直に……」 878 名前:8/10[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 02 36 21 ID jS7CC32r 「……下着?」 シルフィードにそんな事、教えてない筈だけど。 苦しげに呻く『サイト』は、わたしの問いに血走った目で答えた。 ……正直ちょっと怖い。 わたしの身体で一番敏感な所で、サイトの身体を感じたら引き返せなくなる気がしていたから。 だから、『サイト』と『練習』する時は何時も下着は穿いたままだったけど。 「どうしても?」 「…………」 竜の癖に、捨てられた犬みたいな目。 本物そっくりの仕草に、わたしの理性は負けてしまった。 『サイト』にショーツのサイドの紐を見せてあげる。 荒い息、血走った目。 ……シルフィード、どこかで予習とかしてきたのかな? 「わたしを見て……『サイト』」 キスは好き、『サイト』が、わたしだけを見てくれている。 そう感じる事が出来るから。 舌を絡ませたまま、湿った布を脱ぎ捨てる。 ……便利かもしれない、下着を選ぶ基準を増やそう。 『サイト』の熱が直接伝わってくる。 熱い……、先住の魔法って凄い。 そんな事を考えている間にも、わたしの下で『サイト』は必死になって腰を振り、 少しでも密着させようと、最適な位置を探し始める。 わたしも……自分の気持ち良いところを探す。 「ほら、『サイト』……見える?」 わたしと『サイト』の間から、『サイト』の先っぽが見えていた。 荒い息の『サイト』に、食い入るように見つめられると、 押し付けられているモノに負けない位身体が火照る…… シ、シルフィードなのに……変なわたし。 879 名前:9/10[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 02 37 29 ID jS7CC32r タ、タバサが……タバサがこんな子だったなんてぇぇぇぇ 素晴らしい!! 怒涛のごとく押し寄せてくる快感に、俺はされるがままだった。 タバサの小さな身体は、心配になって来る位熱く…… それ以上に気持ちよかった。 「どうしたら、気持ちよくなるの? 『サイト』」 羞恥プレイか? そう思ったりもしたけど、たまにぶつけられる疑問は、 どうやら本気の質問のようだった。 素直に成らないと、気持ち良くして貰えない。 短時間で……多分それほど時間は経ってないと思う、一晩中絡み合って居る様な錯覚を覚えるけど、 ハジメテの俺が、そんなに長時間もつはず無いから。 「う、動いて……タバサ……」 タバサとの呼びかけに、一瞬だけ怪訝そうな顔をしたけれど、 お互いに昂っている為、詮索も無くタバサの身体が俺の上で前後に動き出した。 「……! っ……ひ……なに? ……だめぇっ……『サイト』これ……な……に?」 いつの間にか、ほんの少しだけ開いたタバサの襞が俺の裏筋の上を上下する。 俺のモノに全身の神経が集中しているかの錯覚を覚える。 時折有るか無きかの突起が、どこかに引っかかるたびタバサが悲鳴のような嬌声を上げた。 「……ゃぁっ…………と、止まって……怖い……怖いよぅ」 ……俺に動く余力は無い、お互いじっとしているだけなのに、 密着しているだけで、限界が迫ってくる。 「ひっ……やぁっ……な……に? 『サイト』っ、『サイト』ぉっ」 助けるつもりでタバサを支えた腕も、タバサにとっては快感しか与えないらしかった。 「ひゃっ……だ、だめっ…………っとに、やぁっ……」 抱きかかえる事で互いの密着が増す、もっと気持ち良くなりたくて、タバサを強く抱きしめると、タバサも俺を抱き返す。 「……キス……して……」 不思議と泣きそうに聞こえる声に従って、抱き寄せたタバサの唇を奪う。 驚いたように俺を見たタバサの、 「『サイト』からのキスだぁ……」 幸せそうな呟きに、俺は我を忘れて…… 880 名前:10/10[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 02 38 18 ID jS7CC32r 妙に幸せな気分で目を覚ますと、隣で『サイト』が寝ていた。 先住の魔法の変身でも……男の子のアレ……出るんだ…… 中身はシルフィードだから、出ないと思ってた。 乱れたシーツの上に、いくつか跡が残っている。 『サイト』が気持ち良くなってくれたのなら…… 二人とも力尽きるまでお互いを探り合って、 生まれて始めてかも知れない、濃密な時間に浸った。 でも…… 「癖になったら困る」 「なんなの? なんなの? なんのお話? お姉さま」 シルフィードが、何時もの姿で窓から…… え? ……『わたしの横で眠るサイト』を見つめる。 え? いつの間にか握りしめていたシュヴァリエのマントを広げると、 銀色の五芒星が輝いて…… 「トリステインの……」 って事は…… 「本物?」 満足気なサイトを見つめながら、タバサの脳裏に昨夜の痴態が思い返される。 (きゃ―――――――) 声にならない悲鳴を上げていたタバサは、正気に返ると真っ直ぐ机に向かった。 「どーしたの、お姉さま」 「ちょっと……」 数分後、何かを書き上げたタバサは黙って部屋から出ていこうとした。 「どこに行くの? お姉さま」 「火の塔、ついてきちゃダメ」 ……数分後、不審に思ったシルフィードがキュルケに『遺書』を届けて、 火の塔のふもとで、風韻竜+トライアングル VS スクウェアの…… 「死ぬ……絶対死ぬ……死にたいのぉぉぉ」 「正気に返んなさいっ!」 「お姉さま、死んじゃダメなのー、きゅいきゅい」 世紀の説得が……今、始まる。
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第一回ゼロハウス杯 9月6日にマクドナルドにて静粛に執り行われた。 ケイが自分のプラチナを持ってくるのを忘れたり、 カツオがギリギリまでポケモン育ててたりと、 割とせわしない感じで始まったとかそういうのは内緒。 優勝候補であった小ほそが来れなかったりと、 メンツ的なものでの欠如もあったりした。 大会自体のテンポは思ったよりもいい感じで、 始まってしまえば、割とサクサクだった。 もう2人くらいなら増えてもストレスなくいけそう。 やはり、総当たりは熱い。 順位 ケイ キヴァヤシ 大門 紫苑 カツオ 江戸門 ケイ ─ ○ ○ × × ○ キヴァヤシ × ─ ○ × ○ ○ 大門 × × ─ × ○ ○ 紫苑 ○ ○ ○ ─ ○ ○ カツオ ○ × × × ─ ○ 江戸門 × × × × × ─ 1位 紫苑(5勝0敗) 2位 ケイ(3勝2負) 3位 キヴァヤシ(3勝2負) 4位 大門(2勝3負) 5位 カツオ(2勝3負) 6位 江戸門(0勝5敗) メモ紛失のため、曖昧な記憶が便りです。 正確な情報を覚えてる方は加筆修正をお願いします。 各自の使用ポケとか 紫苑 サンダース ギャラドス ゴウカザル ザングース エンペルト ムクホーク ケイ スピアー ネイティオ ハッサム ミカルゲ ピクシー カクレオン キヴァヤシ リザードン ハガネール マニューラ フシギバナ ハリテヤマ キングドラ 大門 ギャラドス ハッサム エアームド ランターン ブラッキー エレキブル カツオ ムクホーク キングドラ ニドキング リザードン マニューラ ハガネール 江戸門 トゲキッス ビークイン エネコロロ ルカリオ ゴウカザル スターミー 詳細ルール ROMはプラチナ推奨(眠り、こんらん、アンコなどの点を考慮して)。 持ってない人はダイパでおk。ただしリーダーはプラチナの人で。 レベル50、シングル、見せあいあり、6on3。 リーグ戦、総当たり形式。 禁止ポケモンに関しては下記参照。 ポケモンは事前に6匹申請しておく(名前だけでよい)。 途中での変更は禁止。 同じポケモンの使用は禁止、道具の重複もなし。 最後の一匹同士での「だいばくはつ」、「みちづれ」、「ほろびのうた」は、使用した側の負け。 反動(すてみタックルやいのちのたま)などのダメージで瀕死になった場合は、反動技を使った方の勝ち。 状態異常「ねむり」に関しては下記参照。 重複催眠(二匹以上のポケモンを同時に眠らせること)は禁止。 ただし、アンコールやこだわり系のアイテムをトリック等で押し付けられる(自分で持っていた場合は不可)、 「ゆびをふる」で催眠技が出た、「マジックコート」で跳ね返した場合は、大丈夫。 特性「しぜんかいふく」のポケモンはボールの色で判別可能らしい。 禁止ポケモン アルセウス 720 ミュウツー 680 ルギア 680 ホウオウ 680 レックウザ 680 ディアルガ 680 パルキア 680 ギラティナAF 680 ギラティナOF 680 ケッキング 670 カイオーガ 670 グラードン 670 レジギガス 670 カイリュー 600 ミュウ 600 バンギラス 600 セレビィ 600 ボーマンダ 600 メタグロス 600 ラティアス 600 ラティオス 600 ジラーチ 600 デオキシスNF 600 デオキシスAF 600 デオキシスDF 600 デオキシスSF 600 ガブリアス 600 ヒードラン 600 クレセリア 600 マナフィ 600 ダークライ 600 シェイミLF 600 シェイミSF 600 フリーザー 580 サンダー 580 ファイヤー 580 ライコウ 580 エンテイ 580 スイクン 580 レジロック 580 レジアイス 580 レジスチル 580 ユクシー 580 エムリット 580 アグノム 580
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前の回 一覧に戻る 次の回 ゼロの飼い犬16 夏休みの前 Soft-M ■1 はぁー。 深く息をつく。体の中から空気が抜けていって、力も抜けていって、 湯船の縁に寄りかかった背中が段々ずり下がっていく。 首までお湯に浸かって、顎が水面に触れて、もっと下がって。 ぶくぶくぶく。目の前に泡が立ち上る。苦しくなってきたところで、顔を上げて息を吸う。 何回くらい繰り返したかな。結構な長湯になってると思う。 学院の広い浴場の湯船や調度品が、湯気に霞む向こうにおぼろげに見える。 その視界と同様に、のぼせかけて頭の中がぼやけてきてるけど、 その方が余計なことを考えられなくて良い。 長湯になってるのは、別にわたしが急にお風呂好きになったからというわけではなく。 部屋に戻りづらいから。正確に言うと、サイトと一緒に居るのが、気まずいから。 嫌なわけじゃない。むしろ、サイトと一緒に居たいって思ってる部分もあるって自覚してる。 でも、だからこそ、サイトと傍にいるのが……、怖い。 また、顔を半分くらい湯に沈める。誰にとも無しに、自分自身を隠すみたいに。 怖い? 怖いって何よ。何を怖がってるわけ? サイトを? 違う。わたしが怖がってるのは、サイトじゃない。わたしが怖がってるのは……。 水の中に、わたしの体がゆらいでいるのが目に入る。 お湯に浸されて、体の外側から内側まで温められて、体が浮き上がるような心地よさに 包まれてることから、”あの時”の事を思い出してしまった。 あの時は、お尻の下にサイトのお腹があって、背中はサイトの胸に触れてて、 それで、それで……、足の間には、サイトの……。 慌てて首を振って、水面を乱す。わたしの体はよく見えなくなった。 サイトが惚れ薬を飲んでしまう事件があってから、今日で三日目。 その前にわたしが飲んでしまった時はその後に間髪入れずに姫さまの誘拐事件が起こって、 長々と引きずっている余裕も無かったけど、今度は違う。 『わ、わたしは自分でわかってて許したんだから、後から何か言わないでよね!』 目を覚まして、モンモランシーが置いていってくれたらしい解毒薬をサイトに飲ませた後、 わたしはサイトが何か喋る前に一気にそう言って黙らせた。 サイトは惚れ薬の効果があったときとは違う顔で真っ赤になって、でも自分のしたことに 何か弁明することはなくて、一言だけ、『ありがと、嬉しかった』なんて言ってきた。 その日はもう、サイトと顔を合わせられなかった。 ううん、その日以来、まだ一度もサイトとはまともに顔が合わせられてないかも。 サイトの姿を見て、あの時しちゃったことを思い出すだけで恥ずかしくて死にそうになるけど、 それだけの理由じゃない。もっと深くて、向き合うのが不安な気持ちが胸の中にある。 わたしが怖がってるのは、その気持ち。わたしの中にあるもの。 モヤモヤする。体の中に色んな物が膨らんで、解放されずにいる。 ずっと前から、サイトに感謝の気持ちを伝えたいって思ってて、お返しをしたいって思ってて、 それができたら胸の中に溜まったモヤモヤは消えると思ったのに。 なのに、”お返し”できたはずの三日前から、モヤモヤがもっと大きくなってる。 もう、どうしたらいいのかわからない。どうしたいのかもわからない。 気付いたら、もう浴場の中には誰もいなくなっていた。元々入ったのも遅かったけど、 長湯のせいで入浴時間も終わりに近い時刻になってしまっていたらしい。 またひとつ大きく息をついて、湯船から上がる。 夢から現実に引き戻されたように、火照った身体が外気に晒されて冷えた。 誰もいない浴室を歩いて鏡の前に腰掛けると、髪をまとめていたタオルを外す。 癖のあるわたしの髪が、湿気を吸って少し大人しくなって背中に落ちた。 ちいねえさまにそっくりな、自分でも気に入ってる桃色のロングヘア。 鏡に映ったわたしの裸身は、顔から上半身まで、その髪と同じように 桃色に上気している。のぼせたせいか、それ以外の理由もあるのかはわからない。 ■2 でも髪と違って、身体の方はちいねさまには似ても似つかない。細くて、小さくて、貧相で、 まるで子供みたい。この学院に入学したあたりから、ほとんど変わってないように見える。 ――サイトに、この身体、見られたんだ。 また思い出してしまった。着替えを手伝わせてた時のことじゃない。 三日前の、”サイトが望んで”わたしの服を脱がせた時のこと。 サイトはわたしの制服のタイに手をかけて、でも勝手にほどくようなことはしなくて。 わたしはその望みを受け入れて、『知らないフリ』してあげるって宣言した。 どくん、と心臓が跳ねる。鏡の中のわたしが、顔を歪める。 サイトがわたしを求めたのはわかる。惚れ薬を飲んでしまったのだから。 元から、サイトはわたしのことを大事に思ってるって言ってくれた。 その気持ちが膨らんだのなら、わたしに”そういうこと”を望むのは、まぁ、自然なこと。 ……けど、あの時のわたしは惚れ薬なんて飲んでいない。 完全に元のままのわたしが、サイトにキスされて、抱きしめられて、 ベッドに組み敷かれて、服に手をかけられて……、それで、『知らないフリ』すると選んだ。 「……わかってるの?」 鏡の中のわたしに聞く。わかってるの? それがどういう事か。どういう意味なのか。 わかってなかった方がまだ良かった。わたしはわかっていて、はっきり意識があって……、 それでもサイトの望むことを、受け入れたんだ。 結婚しても三ヶ月はダメなこと。その前には母さまと始祖ブリミルにお伺いをたてなきゃ いけないこと。そうなる前には、姫さまに報告するって約束したこと。 ──愛する殿方にしか許しちゃいけないこと。 お風呂で温まったのとは違う熱が、体の中に灯る。あの時の気持ちを思い出してしまう。 ”それ”って、神聖な、儀礼的なものだと思ってた。然るべき時に、厳正に行うものだって。 でも、違った。もっと生々しくて、衝動的なものだった。綺麗でも幻想的でもなかった。 サイトに抱きしめられて、撫でられて、見つめられて、「好き」って言われて。 気持ちよくて、切なくて、もっと欲しくなって。サイトがわたしに求めていることが、 わたしをもっと気持ちよくしてくれることだっていうのがなんとなくわかってしまって、 サイトの気持ちに応えてあげたいって気持ちもあって……、そんな誘惑に、身を任せてしまった。 『子供を作るわけにはいけない恋人同士は、真似で気持ちを確かめ合うんだよ』 耳元で囁かれたサイトの声が蘇って、背筋が震える。真似だったら良いなんて問題じゃない。 ほんとに、そんなの、妻と夫でなくちゃ……、百歩譲っても恋人同士でしかダメなことなのに。 なのに……。 湿った吐息が漏れる。鏡の中のわたしの瞳が潤んで、視界がぼやける。 なのに、気持ちよかった。どきどきして、怖くて、なのに嬉しかった。 ダメなのに、嫌じゃなかった。それどころか、何度も思い出してしまう。 思い出すだけで、サイトにマッサージされたときみたいな気分になる。 こんな状態で、サイトと一緒にいたら、どうなっちゃうのかわかんない。 だから、サイトと顔を合わせられない。顔を合わせるのが怖い。 惚れ薬の事件が起こる前から、ここしばらく、ずっとサイトとのことで悶々としてる気がする。 アルビオンから帰ってきた頃から、ずっとかも。 こんなのやだな、って思う。サイトとは、もっと……。もっと、どんな関係でいたいんだろう。 今度はため息をついて、顔を上げる。もうお風呂を上がろうかと思って 腰を上げようとしたら、そこでやっとお尻のあたりの違和感に気付いた。 水でもお湯でもない、ぬるりとした感覚。わかってて、気付かないフリしてたのかも。 『……好きな相手を、傷付かずに受け入れるために濡れてるんだよ』 また、サイトの事を考えてたから? だから、こんなになってるの? ぞくぞくとした痺れが腰から這い上がってくる。そんなの、ダメなのに。理屈でわかるのに。 なのに、わたしの中には、”そんなこと”を望んでるわたしがいるの? 惚れ薬を飲んじゃった時みたいな、”わたしじゃないけど、わたし”が。 ■3 『ルイズと同じ。大事な相手と繋がりたいから、こうなるんだ』 下着越しに押し当てられて、わたしの手で握ってしまった、サイトの感触を思い出してしまう。 固くて、熱くて、大きくて、なのに、サイトの一部なんだってことが凄く伝わってくるもの。 触れて、擦りつけたら、頭がどうかしちゃうんじゃないかってくらいどきどきした。 『ここで、ルイズの大事なところで、俺と繋がる。そうしたら子供ができる』 「……っ!!」 繋がる。子供ができる。その言葉を反芻してしまった瞬間、腰が震え、背筋が跳ねた。 さらにたくさんの熱いものが、わたしの中からじわっと滲み出る。 サイトの、あんなに大きいので、わたしのここと。繋がる。子供をつくる。 そんなこと望んでない。そんなことするわけにはいかない。わかってるはずなのに、 考えれば考えるほど身体が熱くなる。頭の中がぼやけてくる。それが、怖い。 馬鹿、ばかじゃないの、わたし。そんなの、サイトにだってわかってることよ。 サイトは『真似させて欲しい』って言ってきた。惚れ薬のせいでわたしの事が 好きで好きでたまらなくなっちゃったサイトでさえ、今のわたしと子供を作るわけには いかないってわかってた。そんなことになったら、学院にいられないもの。だから、 『子供を作るわけにはいけない恋人同士は、真似で気持ちを確かめ合うんだよ』 そんな風に、わたしを求めた。惚れ薬のせいで苦しかったんだろうに。 ほんとはわたしと”真似じゃないこと”したかったんだろうに。わたしのことを、考えてくれて。 「ん……、真似じゃ、ないこと……」 朦朧とした意識の中で、指がお腹の方に降りていく。もし、もしもの話よ。 仮に、サイトがわたしと本気で”真似じゃないこと”をしようとしたら……、できるの? わたしのそこは熱く火照ってて、とくんとくん疼いてて、サイトに擦りつけてた時の感触を ありありと思い出せてしまう。その時のいやらしさも、気持ちよさも。 こんなに『好きな相手を受け入れるため』に濡れてる。それこそお漏らししたみたいに。けど、 くちゅ。 喉から押し殺した吐息が漏れる。サイトが下着越しに指してくれた、 わたしの割れ目の奥の、熱い潤みが漏れだしている場所に指を潜り込ませてみて……。 背筋に怖気が走り、すぐに怖くなって引き抜く。気持ち悪い。罪深い事な気がする。 自らこんなところに触れるなんて、始祖ブリミルがお許しになるわけない。 でも、少し触っただけでもわかった。こんな狭い場所で、サイトのあんなに大きいのと 繋がれるわけない。わたしの体が壊れるだろうし、きっとサイトだって苦しい。 改めて、鏡の中のわたしを見つめる。さっき見た時よりも、もっと貧相な身体に見えた。 お風呂で他の女生徒と比べると、さらに惨めな気分になる。 わたしより背が低い同級生を捜す方が大変だし、背が同じくらいの子でも、大抵わたしより 胸もお尻も肉付きが良いし……。そ、それに、他の女子は大事な所に毛が生えてるのに、 わたし、無い。みっともないから隠してるけど、キュルケとかにばれたら何を言われるか。 ……そういうのもあるから、”真似”をさせて欲しいと言ったの? わたしの身体じゃ、”真似じゃないこと”なんてできないだろうから? 鏡の中のわたしの顔が、不安に曇る。わけもない罪悪感に襲われる。 ………。 な、何で罪悪感を感じなきゃいけないのよ。わたしが不安なのは、本当にいざ結婚して 子供を作る事になった時に、できなかったら困るっていう不安なわけで、サイトは関係ないでしょ。 それに、もしかしたらサイトのが特別大きくて、他の男性のはそうでもないかもしれないし。 そこまで考えたわたしの中に、ぞくりと悪寒が走った。サイトじゃない、他の男性。 想像してしまった瞬間に、気持ち悪くなった。眼をぎゅっと瞑って、その時浮かんだ考えを 全部振り払う。自分でも、致命的な事に気付いてしまった気がしたから。 考え込んでしまったことと、たった今のことで冷えてしまった体を温めようと思って、 立ち上がって再び湯船に向かう。と、そこで。 ■4 浴場の戸が開き、誰か入ってくる気配がした。 こんな遅くに? と自分の事を棚に上げて、入ってきた人影に目を向ける。 浴室にまで杖を持ち込み、入浴時のキュルケなんかとは別の意味で 堂々と裸身を晒して歩いてきたのは、雪風のタバサだった。 「…………」 眼鏡をとっているのでいつもと違う印象の瞳が、わたしに気付いて目を止める。 そのまま半秒くらいわたしを見つめてから、タバサは湯船の方へ行き、 桶に汲んだお湯を無造作に頭から被った。 挨拶するタイミングも逃してしまい、気まずくなりながらわたしが湯船に浸かると、 タバサは先程までわたしが座っていた鏡の前まで歩いていって腰を下ろす。 備え付けのシャンプー(大抵の女生徒は自前で用意してるので、学院が用意したものを 使う生徒はほとんどいない)を適当に頭にかけて、わしゃわしゃ豪快に洗い始めた。 わたしはちいねえさまに教わったとおり、気を遣って丁寧に手入れしてるのに。 いくら髪が短いからって、ありゃ無いわよ。……でも、タバサって普段から そこらの女子よりもずっと綺麗な髪してたわね。なんか不公平な気がするわ。 体の方も、手入れというより汚れを落とす作業といった風で機械的に洗い終えると、 タバサは立ち上がって湯船の方に歩いてきた。 つい、じっと見てしまう。同学年でわたしより明らかに背が低い、数少ない生徒の一人。 なのに、わたしみたいに、身体に劣等感を持っているような素振りがみられない。 自信があるわけじゃなくて、たぶん、外からどう見えるかってことに関心が無いんだろう。 気楽でいいわね、と思うより先に、自分が情けなくなった。 わたしより小さな彼女を見ても、ちっとも安心した気分になれない。 タバサは湯船の縁をまたいで、わたしから少し離れた場所で顎まで湯に浸かる。 ……あの子もつるつるだった。こっちにはちょっと安心したかも。 彼女は額に張り付いた髪を直すと、わたしの方には注意も払わず目を閉じた。 相変わらず、何を考えてるのか想像もできない。 今思い出したけど、前々から、彼女にはちょっと気になるところがあった。 この子、ちょっと前までは他人と会話もろくにしてなかったのに、 いつのまにかサイトに対しては妙に協力的になってたのよね。 宝探しの時にうち解けたっていうけど、何があったのかサイトに聞いてもはぐらかされる。 わたしの詩作の手伝いをしてくれたり(結局無駄になっちゃったけど)、 サイトが惚れ薬を飲んだ時は、頼んでもいないのに薬の買い出しに行ってくれたり。 それに、詩作の必要が無くなった後も、この子とサイトが一緒にいるのを何度か見た。 この子とサイトに、何があったのか気になる。なんで教えてくれないのよ。 さっきまでとは違う不安にムカムカしてきて、目を閉じたままの彼女をじっと見つめる。 子供みたいに小さいけど、気品が感じられる凄く整った顔立ちをしてる。 湯の下に揺らいで見える身体も、細いなりに均整がとれていて、幼児体型ってわけではない。 まるで精巧な美術品みたいな容姿は、わたしから見ても綺麗だと思う。 そんなタバサは、手を伸ばせば届く湯船の縁に、自らの杖を置いている。 確か彼女は、トライアングルクラスの風のメイジ。学院の生徒の中では一、二を争う実力者。 そのことを思い出して、わたしの中に嫌な感情が生まれる。 魔法が使えなかった時は、わたしにとってドットだろうとラインだろうと、他のメイジは 等しく劣等感の対象だった。けど、虚無魔法や簡単なコモン・スペルが使えるようになった今、 タバサが突出して優秀だということがよくわかる。 わたしの虚無は思い通りに使うことも出来ないし、限られた人にしか明かせない。 自分の力で習得したという実感が薄いし、周りからはゼロのルイズだと思われたまま。 けれど、彼女はわたしよりも年下なのに学生のレベルを越えた魔力を持ってる。 誰もが認める秀才。汚い僻みの気持ちが、胸の奥をちくりと突いた。 そんな彼女が、なぜ体面的には平民でしかないサイトと親しくなってるんだろう。 「……あの、タバサ?」 そう思ったら、深く考える前に勝手に口が開いてしまった。 ■5 「なに?」 タバサは急な呼びかけに驚いた風も無く、ゆっくり瞼を上げて鮮やかな青い瞳でわたしを見た。 まるでわたしが何か話しかけるのを予想してたみたい。逆にこっちの方がたじろいでしまう。 「あ、えっと、その……。聞きたいんだけど、あなた、わたしの使い魔と何があったの?」 「質問の意味がわからない」 聞くと、タバサは微かに首を傾げた。本当なのか、とぼけてるのかこの無表情じゃわからない。 「だから、あなた何かとわたしたちに協力してくれるでしょう。それは有り難いんだけど、 どうしてそんなことしてくれるのか知りたいの。この前は、『借りがある』なんて言ってたし」 「借りは、ラグドリアンでの一件。水の精霊と対決することを避けられた」 「それだけじゃないでしょ。その前にも、わたしの詩作の相談に乗ってくれたじゃない」 思わず湯船の中で小さく詰め寄ってしまうと、タバサは深い息をついた。そして、 「……あなた、戦争に従軍するつもり?」 いきなり話を変え、そんなことを聞いてきた。 「え……、え?」 「トリステインはアルビオンに対する侵攻作戦の準備を進めてる。少し調べればわかる」 「そ、そうじゃなくて……!」 タバサの言葉に頭が混乱する。姫さまが本格的な戦争の準備をしてることは聞いてる。 そのために、わたしの虚無の力が必要になるかもしれないという話も。 けど、タバサからしたらわたしはただの魔法学院の生徒で、しかも女子。 わたしが従軍する可能性なんて思いつきもしないはずなのに。 いや、違う。彼女はわたしの使い魔であるサイトがそこらのメイジよりも強いことを知ってるし、 姫さまの誘拐事件の時には、彼女の目の前で虚無魔法まで使ってしまった。 わたしがただのゼロのルイズじゃないってことは察してるのかも。どうしよう。 「そう考えてるなら、危険」 わたしがどう答えたらいいのか迷ってるうちに、タバサは次いでそう言ってくる。 「え?」 「あなたもあなたの使い魔も、高い確率で命を落とす。あなたが、下手だから」 淡々と命を落とすとか下手とか言われて、怒るより先に呆然としてしまった。 「扱える魔法の数や威力とは別の所。判断力、動き方、タイミング、状況の把握、 どれをとっても下手。彼に守ってもらうにしても、あなたが荷物であっていいわけがない。 あなた自身のためにも、彼のためにも」 「な……!」 さすがに言い返そうと思ったけど、言葉に詰まる。この前の事件のことを思い出したから。 タバサやキュルケがいなかったら、わたしを守ってくれるのがサイトだけだったら、 ウェールズ皇太子やその部下の騎士の魔法を止めきれなかっただろうことを。 「彼と自分の力を生かすことを、もっと真剣に考えた方が良い」 タバサは最後にそう言って、湯船から上がった。 傍らの杖を拾うと、真っ直ぐに浴場から出て行こうとする。 「ちょ、ちょっと待ってよ! それはいいけど、わたしの質問の答えは……!」 慌てて彼女の後ろ姿を呼び止めると、タバサは振り向いて一瞬だけわたしを見つめ、 そのまま何も言わずに脱衣所に出てしまった。 その時のタバサの視線。「わからないの?」とでも言いたげだった。 タバサがわたしに言ったのは、今のままじゃわたしとサイトが危険だっていうこと。 わたしがただ守ってもらうだけの存在であってはいけないということ……。 「……タバサも、サイトに守ってもらった……?」 気付いて、呟く。さらに言うなら、『わたしならば、あなたよりは彼の負担にならない』 そんな意味も込められていたような気がする。 ずきん、と胸の奥が痛んだ。腹立たしいとか、モヤモヤするとか、そういうんじゃなく……、 もっと重い、不安や焦燥みたいなものの種が、そこに芽生えていた。 つづく 前の回 一覧に戻る 次の回
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つづきもの *基本的に単発ですが、内容がリンクしています。上から下に時間軸順になっています。 2-598ある日、森の中 3-64あなたのいないアサ 3-274ルイズとシエスタ 4-47「師」と呼べるひと 4-164虹のむこうに 4-409虹のあとで 4-331君の名は 4-479あなたのあかし 4-668虚無の曜日 5-120続・虚無の曜日 5-400サイトがんばる! 5-713半分はやさしさ 5-843ふぁいなるあんさー?(選択肢モノ) 6-454タバサの使い魔 6-619女の友情 7-15ご注文は?(選択肢モノ) 7-401ルイズとタバサ 7-565夢への一歩 8-275あらしのよるに 9-357雨の降る夜は 9-615イーヴァルディの花嫁 10-136ひのきのお風呂 10-221才人のお買い物(選択肢モノ) 10-623雪風の計 10-722雪風の贈り物 11-249女王の花嫁修業 11-391聖女の日(選択肢モノ) 12-365青銅と香水と聖女の日 12-416サクラ前線異常アリ 12-613才人の逆襲 13-5平賀君の恋人 13-103メイド・イン・トリステイン(選択肢モノ) 13-375千の偽り、万の嘘 13-528ねばねば健康法 14-83たのしいおかいもの 14-211どっちにするの?(選択肢モノ) 15-312戦技教官雪風 15-455今日の料理 15-692子供のころに戻って(選択肢モノ) 16-422ケイコとマナブ 16-785ハッピーバスデー・トゥ・ユウ 17-96呪印 17-311ドキっ!女だらけの格闘大会 18-88真昼の夜の夢 18-413涼しい夏のすごし方(選択肢モノ) 18-???忠誠の証 20-255君が主で使い魔が俺で 21-251そこに『山』があるから 21-313上手なわんこの手なずけ方 21-559おっきしました 21-654紅く萌える季節 22-729ウチの妹のばあい 23-280教えて!魔法のリリック 23-412冬の風物詩 23-695戦場のメリー・クリスマス(選択肢モノ) 24-393すきこそものの 24-667人生の終焉(投票モノ) 25-212ホワイト・クリスマス 25-471年末大掃除(投票モノ) 26-18おしおきだべ〜 26-481つきにかわって××よ 26-546どきどき異端審問!(はじめから)(投票モノ) 27-13どきどき異端審問!(アンリエッタ)(投票モノ) 27-182どきどき異端審問!(タバサ)(投票モノ) 続き物@ヴァリエール三姉妹編 *「つづきもの」のパラレルバージョンです。 9-487父来る[注 このSSは続きもののパラレルにあたります] 10-502えっちできれいなおねえさん 12-683才人の受難 15-16挑戦者アリ! 16-607ヴァリエール家家族会議 17-548ちいねえさまの処方箋 18-178月は東に日は西に 19-327ねえ、ちゃんとしようよっ 続き物@ティファニア編 *上記の「つづきもの」とはリンクしていません 5-195空に咲く花 6-267食後のデザート 9-122黒い誘惑 11-150危ない桃りんご 16-684禁断の果実 17-249華の嵐 18-323続・禁断の果実 続き物@タバサ編 *「つづきもの」パラレルバージョン、タバサルートです。 17-853サイトの使い魔 20-119使い魔の寝床 22-246鋼の錬筋術師 23-618メイドが来たりて笛を吹く 24-559運命の胎動 24-631性欲をもてあます 26-225漆黒の力 26-310もうガマンできな〜い 続き物@将来編 *未来予想図? 12-88ある吟遊詩人の手記 X00-03きっとこんな未来・平民編 X00-06きっとこんな未来・女王編 雑貨 *パロや小ネタなどです。 3-33時を駆ける少女 3-152魔法戦隊メイガスファイブ 6-552『魔法戦隊メイガスファイブ』1〜5話ダイジェスト 3-569萌えろ!トリステイン学園 4-229ゼロの三国志 X02-01虚無の曜日if X02-02つづきものシリーズ登場人物紹介 7-495双月の舞踏会〜if X02-03キャラクターイメージ曲 14-632救国の勇者 X00-04オリジナル設定補足 17-498ジェシカとでぇと 21-251そこに『山』があるから 25-379帰ってきた勇者 アニキャラルイズ板より(妄想請負人) A2-455サイト最終日 A3-602最終日のつづき 4-622つづきの蛇足 魔法学院大運動会提唱・参加 せんたいさんにどうしてもお願いがあります出来れば、サイトとシャルロットが結婚したエピソードを書いてみて下さい!多忙な所、恥じをしのんでのお願いです!! 自由な旅人とかもう少し空気を呼んでください。 荒れる原因にもなりかねない -- 今からでもぜひ、『人生の終焉』のキュルケ版を拝読したいです! -- フェラ - 名無しさん 2012-08-31 08 29 19 くわえる - 名無しさん 2012-08-31 08 39 44 名前
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前ページ次ページゼロな提督 「さて、泣くのはこのへんで終わりにしておくれ。 そして、これからどうするか、急いで考えようじゃないか」 ロングビルの言葉は冷たかった。 だが、急いで考えなければいけないことだ。泣いている暇はない。今は涙を一滴流す時 間がエキュー金貨の詰まった革袋より価値がある。 第26話 世界が変わる日 最初に声をあげたのはシエスタだった。 「それだったら、タルブへ行きましょう!しばらくブドウ畑に囲まれて、静かに過ごしま しょうよ」 その意見にロングビルは肩をすくめ首を振った。 「何いってんだい?タルブはトリステイン国内じゃないか。これからアルビオンとゲルマ ニアに焼かれる国になんか、いられるかね」 その言葉にシエスタは絶望的現状を改めて気付かされた。顔は青ざめ、口を両手で覆っ てしまう。 ロングビルはヤンの方を見た。 「あたしの村にみんなでおいでよ。今となっちゃ、ハルケギニアで安全なのはアルビオン だけだろう?テファも喜ぶよ」 いきなり三人の間に、長い杖が差し込まれた。 いままでずっと傍観していたタバサが、いつのまにやらすぐ隣にまでやって来ていた。 「うちに来るといい」 無表情なまま、突然の申し出。三人はキョトンとして青いショートヘアーの少女を見下 ろした。 後ろからきた青く長い髪を持つ女性が、無口なタバサに代わって話を続けた。 「きゅいきゅい!あのね、お姉さまはね、ガリアにお家があるの。オルレアンって言って ね、とっても大きなお屋敷なの!きゅい!」 三人は、今度は唖然とした。 どう見ても年下のタバサを姉と呼び、成人女性なのに子供のような口調で、セリフの最 初と最後に「きゅい」なんておかしな言葉が付く。そんな事を気にしていられる状況では ないのだが、どうにも奇異なものを見る眼で見てしまう。 「おでれーた、ヘンな女だ」 ヘンな剣が失礼な事を呟いた。 まぁそんな事はどうでもいいや、とヤンは気を取り直し、改めて女性の言った言葉を思 い返してみた。 オルレアン家といえば、ガリアの王弟だ。王宮の命でビダーシャルを学院へ案内してき たのは、その縁か。ということは、ガリア王から自分の監視と護衛、必要に応じてエルフ との連絡役を命じられているだろう。 だが、最悪の場合は・・・。 「僕の護衛役を買って出てくれる、ということかな?僕だけじゃなく、ここにいる僕の関 係者全員も含めて?」 「そうなのね!きゅい!」 見た目二十歳くらいの女性は、まるで子供のように天真爛漫な笑顔で答えてくれた。 タバサも小さく頷いた。 「おそらくはガリア王から、僕が危機に陥った時は拉致してでも保護してガリアに連行し ろとか、ガリアに仇なす時は殺せ、とか命令されてるだろうけど。今は敵対も妨害もしな い、ということだね?」 ストレートすぎるヤンの言葉に、タバサは一瞬遅れて頷く。 隣の女性は「きゅ、きゅい!?」と呻いて目を逸らした。 さてどうしよう。ヤンは腕組みして思案にふける。 トリステインは数日以内に灰になる。アルビオン艦隊はおそらくトリステイン近くの上 空で待機しているはずだから、ウェールズとアンリエッタを回収次第トリスタニアへやっ て来る。ただでさえ混乱を極めている王宮とトリスタニアへさんざん砲撃を加え、抵抗の 意思も可能性も完膚無きまでに破壊し尽くしてから、地上部隊が降下してくるだろうか。 それとも、まずはラ・ロシェールを占領して地上侵攻拠点とするかもしれない。そうだ、 まだトリステインとゲルマニアの艦隊がラ・ロシェールにいるから、まずそっちを狙うだ ろう。 いずれにせよ、トリステイン占領に一週間もかからないだろう。その次はゲルマニアの 都市国家群だ。ゲルマニアもトリステインへ報復のため攻撃する。実際の侵攻には数日か かるだろうが、ゲルマニア国内を戦場にしないために一気に侵攻して、戦端をトリステイ ンで切ろうとするか。 ゲルマニアの諸侯は皇帝への忠誠は薄いから、もし戦局がアルビオン優勢とみれば即座 になだれをうってレコン・キスタに付く。残るはガリアとロマリア。この二国の出方次第 にかもしれないが、両国も戦火が及ぶのは避けがたい。 そういえば、ガリアの動きが分からないな。完全に沈黙を守るって、どういうことだろ う?どこかと同盟するなりなんなりの動きがあっていいはずなのに。無能王って呼ばれて るけど、ガリアの発展具合を見ると、無能とはほど遠い。単に魔法の才が低いというだけ で、為政者としての才は長けている。なのに動かない。でも僕の護衛や強制連行をタバサ さんに命じているなら、今の事態は予想していたということだろうか?…この点は情報不 足だな。 なんにせよ、今は逃げた方が良いな。 ウェストウッド村で静かに暮らそうか、いったんガリアに渡ってエルフと連絡をとろう か…。 「ウェンリーよ」 ヤンを呼ぶ声が、彼を思考の海から現実世界へ引き戻した。 そこには、悲壮な決意を秘めた表情を見せる公爵がいた。公爵夫人は愛娘の背を押し、 ヤンのもとへ行くよう促している。 「逃げるのであれば、ルイズも連れて行け」 その言葉は、あまりにも苦渋に満ちた言葉に聞こえた。 ルイズは悲壮な色を浮かべた瞳で父と母を見上げる。 「ま、待って下さい父さま!母さまも、私だけ逃げよとはどういうことですか!?父さま と母さまは、どうなさるつもりですか?」 「私と父さまは、トリステインに殉じます」 公爵夫人の言葉は、苛烈なる眼光そのままに苛烈だった。一切の迷いも恐れも含んでは いなかった。 「そんな、それでは!私も、私も残ります!侵略者から国を守るため戦います!!」 縋り付いてくる娘に、母の眼光には寂寥が混じった。 「ダメです。もはや、トリステインは終わりです。エレオノールとカトレアもガリア辺り に亡命をさせます。マリアンヌ陛下と共にトリステインの大地を覆う屍になるのは、私達 だけでよいのです」 「ダメです!死んではダメです!そんなの、そんなのダメ!…あたしの、あたしの魔法な ら、『虚無』なら戦えます! 私、分かるのです。自分の中に溜め込まれた精神力なら、アルビオン艦隊もゲルマニア 艦隊も、まとめて吹き飛ばせます!!この国を、ヴァリエール家を、トリステインを守れ るんです!」 ルイズの言葉は、系統魔法の常識からはかけ離れたものだ。 だが、ルイズの言葉を聞いた公爵が首を横に振ったのは、娘の言葉と魔力を疑ったから ではなかった。 「確かに、お前の『虚無』は大きな力を秘めている。それは先ほど聖堂を消した事からも 分かる。だが、残念だが…もはや、艦隊を倒せばどうにかなる、という段階ではないのだ よ、ルイズ。 アルビオンもゲルマニアも、艦隊が潰れたなら再建すればいい。だが、トリステインは もはや再建出来ない。アルビオンとゲルマニアに挟まれているという地理に変化はなく、 アンリエッタ姫が貴族達の忠誠を裏切ったという事実は隠せないのだよ。地の利も人の輪 も失ったのだ。 利に聡い者達は早々にゲルマニアかレコン・キスタのいずれかにつく。特に我がヴァリ エール家はゲルマニアのツェルプストー家と隣接している。ゲルマニアの侵攻を一番に受 けるのだ。そして王家も他の貴族も援軍には来ない、来る事が出来ないのだ」 ルイズの背を押して逃亡を促していた母も、悲壮感を漂わす口調で絶望的未来像を語っ た。 「ベアトリス殿下は、この一件を報告するためクルデンホルフ大公国へ戻りました。かの 地はゲルマニアとの縁が深いので、すぐにゲルマニア側に立ち、トリステインへ杖を向け る事でしょう。 いかにルイズの『虚無』が強き力を持とうとも、アルビオン側とゲルマニア側の両方に 立つ事は出来ないのです。それに、敵は艦隊だけではないの、地上から騎士隊も銃士隊も 傭兵も来るのよ。 そして精神力が尽きた時、あなたも敵に討たれ、死んでしまうのですよ」 「そ、そんな、そんなの!でも、だったら母さまだって、父さまだって!もう、トリステ イン王家に忠誠を尽くす必要は無いではないのですか!?」 王家への忠誠を捨てる。 これまでのルイズからは、ヴァリエール家の者としては有り得なかった言葉。 そして、その言葉を投げかけられた夫妻は、哀しげに微笑んだ。 「わしはな、ルイズ。もう年をとりすぎた。もはやトリステイン貴族として以外の生き方 が出来ん。今さら新しい人生を歩めなど、酷な事をいわんでくれ」 「でもルイズは、私達の娘達なら、過去を捨てて新しい人生が歩めます。どこかハルケギ ニアの片隅でも良い、貧しい平民としてでも構いません。生きなさい。決して死んではな りません」 「そ、そんな、そんなことって、そんな・・・」 もう、ルイズの瞳からは涙すら流れなかった。 顔は血の気を失い、足からは力が抜け、指は動かし方を忘れたかの如く震えるのみ。 ただ死を覚悟した父と母の手に支えられて、どうにか立っているだけだ。 その思考からは、何一つ現状に希望を見出す事が出来なかった。 どうして?どうして、こんなことになったの? ヴァリエールの名を捨てるだなんて 貴族の地位を失うだなんて 敵に背を向けるだなんて 名誉の為に死んではならないだなんて 生き恥を晒すだなんて トリステインから逃げろだなんて 父さまも母さまも見捨てろだなんて 貧しい平民として生きろだなんて あたしの、あたしの人生は何だったの!?やっとの思いでメイジになったのに、すぐに 死ななきゃいけないの?今度は貴族じゃなくなるというの!? もう、終わりなの?本当に、本当にもうどうしようもないの? 何でもいい!何か、何か出来る事はないの? 何か上手い手は、一発逆転なんて調子の良い事は言わないから、なんとかトリステイン を、いえヴァリエール家だけでも、ああもう父さまと母さまとちい姉さまとついでにエレ オノール姉さまだけでいい! どうか助けて!みんなを救って!! この状況を、何かいい手は、助けてくれる人は・・・助けて、くれる、人・・・そんな 都合の良すぎる人がいるわけが・・・? い る いるじゃ、ない…いるじゃないの! ルイズは、ヤンを見上げた。 もはや涙は枯れ果てた目で、それでも輝く大きな鳶色の瞳で。 父と母の手を振り払い、黒い燕尾服へすがりついた。 どこへ逃げようかと算段を立てていたヤンへ、自分の執事へ。 「ヤン!お願い!みんなを助けて!! トリステインを、いえ、ヴァリエール家だけでも!ああ、父さまと母さまだけでも!え と、ちい姉さまと、エレオノール姉さまも!」 「る、ルイズ…」 縋り付かれたヤンは、急激な思考の方向転換を要求され、些か混乱してしまった。この 絶望的状況をなんとかしろとは、さすがの彼も「無茶言うなぁ」と呆れた。 だが、ルイズはいたって本気だった。彼女にとり、ヤンの頭脳はまさに最後の希望だっ た。その細い腕で力の限り、精一杯ヤンにしがみついていた。 「お願いよ!あんたしかいないの! あんた、元帥だったんでしょ!?強大なローエングラム王朝軍を相手に、圧倒的不利な 状況でも戦い続けてたって教えてくれたじゃない!『ふりーぷらねっつ』の軍最高司令官 だったんでしょ!? なら、その力を見せて!あたし達を助けて!!」 ヤンは、困惑していた。 いや、ヤンだけではない。何も言いはしないが、公爵夫妻もロングビルもシエスタも、 タバサ達もルイズの懇願に困惑していた。彼女の気持ちは分かる。だが、こんな状況をど うにかできるはずがない。デルフリンガーですら何もしゃべろうとはしない。 哀しげな視線がルイズへと集中する。 ヤンは溜め息をつき、しゃがんでルイズと目線を合わせ、小さな肩に手を置いた。 「ルイズ・・・逃げよう。もう、トリステインの事は諦めた方がいいよ」 「ダメよ!あたしは逃げない、諦めない!父さまも母さまも助けたいの!みんなを、みん なを助けて!力を貸してっ!!」 ヤンの言葉にルイズは力一杯首を振る。長い髪を振り乱してヤンへ懇願し続ける。 「ルイズ、ルイズ・・・」 ヤンは、主の肩を掴む手に力を込めた。 「トリステインは、このままじゃ、もうすぐ火に包まれるんだ。いや、ハルケギニアの中 で安全なのは、おそらくアルビオンだけだろうね。 僕は、ヴァリエール家の執事じゃないんだ。ルイズ、君個人の執事なんだよ。僕が助け なければならないのは、君なんだ。君を死なせるわけにはいかないんだ」 「そんな!あんたでも、どうしようも無いって言うの!?」 「この国に君を残すなんて危険な事、僕には出来ないよ。 昔、僕の父にも等しい人を戦争で失った時に思ったんだ。誘拐してでも助けるべきだっ たって。 もう、あんな辛い想いはゴメンだよ。必ず君の命を守るから、一緒に来て欲しい。僕ら と一緒に安全なところへ逃げて欲しい」 「ダメェッ!!そんなこと、そんなの出来ない!あたしだって、あたしだって父さまも母 さまも失いたくない!」 「ルイズ…」 小さくて可愛い主は、再び涙を流す。 ぼろぼろと大きな雫が、クシャクシャになった顔の上を流れ落ちる。 噴水の水で濡れたピンクのドレスを、さらに濡らしていく。 今度は、ヤンに視線が集中する。 ヤンは天を仰ぐ。 まったくもって、女の涙というのは最強の武器だ。 しかも自分の命の恩人で、召喚以来ずっと一緒に暮らしてきた少女。 ユリアンのように、自分の娘かとすら思える愛しい女の子。 色々な事があったけど、杖で脅されたり死地に向かわされそうにもなったけど、今では 大事な家族だと思ってる。 執事なんて言い訳だ。本当はこの子と、マチルダと、シエスタと、みんなと一緒に平和 に暮らしたいんだ。 分かってる、分かってるんだ。 今逃げても、どこへ行っても、必ず戦火が追ってくる。 飢えた難民が、傭兵崩れの盗賊が、度重なる飢饉が、屍の山から湧き出す疫病が、重税 を取り立てる貴族という名の強盗達が襲ってくるんだ。それはアルビオンでもガリアでも 変わらない。 どこへ逃げたって、平和じゃないんだ。安全とは言い切れないんだ。 でも、この状況をなんとかしろ…と言われてもなぁ。 果たして、どこかへ逃げるのと比べてマシと言える策なんてあるのだろうか? 平和を守る手段か・・・ ヤンは、天を仰ぎ続ける。 かつて皇帝ラインハルトすら元帥の地位をもって旗下に加える事を望んだ慧眼を。ジョ アン・レベロが独裁者になる事を恐れた頭脳を。人類の歴史を学び続けたことにより得た 知性を。その頭蓋に収められた全てを総動員する。 寝たきり青年司令官とか、むだ飯食いとか、非常勤参謀とか呼ばれる事を自慢にすらし ていた節のある彼が、その悪名を返上するかのように灰色の脳細胞を働かせた。脳神経細 胞が超過勤務手当を求めてストをするのではなかろうか、とバカな事を考えてしまうくら い必死で。 しばしの時が過ぎる。 ヤンは何も言わず、天を仰ぎ見て考え続ける。 その場の誰もが口を閉ざし、中肉中背で収まりの悪い髪を持つ男を見つめている。 ヤンは目を閉じる。 口元を引き締める。 そして、寝ぼけまなこを開いた。公爵夫妻へ向けて。 「公爵様、そして奥様」 いきなり声をかけられた二人は、何事かと目を見開いた。 「お二方にお伺いしたい事があります」 二人は顔を見合わせる。 口を開いたのは公爵だった。 「良かろう、何を聞きたいのだ?」 しゃがんだままのヤンは公爵を見上げ、真っ直ぐに問いただした。 「先ほどの言葉、真ですか?」 「さっきの、言葉?」 「聖地奪還の過程で流れる血と国土の荒廃を考えよ、民草を守れ、間違いを指摘するのも 忠義…これらの言葉です」 公爵はヤンの意図が掴めなかった。いきなり見当違いなことを聞かれたかと思ったが、 何か意味があるのだろうと想い、ヤンの話に応じる事にした。 「真だ、嘘偽りはない。 われら貴族は民の安寧を守るための力を始祖より授けられたのだ。決して無為に戦乱を 起こすためではない。特にヴァリエールのごとき旧き貴族は、トリステインの品位と礼節 と知性の守護者たるべき地位にある。 …いや。あった、と言うべきだな。わしの若い頃は、名誉と誇りと忠誠だけを守れば、 誰からも後ろ指を指される心配はなかった。しかし、それは今日をもって終わりを告げた ようだ」 公爵は笑った。自嘲と無念を含んだ笑みを浮かべた。 そんな公爵を、ヤンは変わらぬ口調で問い続ける。 「それでも、平和を守りたいと望めますか?名誉より、忠誠より大事なものがあると。メ イジだけでなく、平民も含めた全ての人々が、戦乱で傷つき死に逝くことのない世界であ るべきだ、と言えますか?」 「・・・何を、言いたいのだ?」 ヤンはゆっくりと立ち上がる。 自分にしがみつくルイズの背に手を回しながら、公爵夫妻を正面から見据えた。 「あなたの命、いえ…あなた達二人の命、名誉、忠義。平和のため、私に預けて下さい」 それは、この場の誰もが耳を疑う言葉。 ヤンの言葉は、平和を守る手があるということ。 ただの平民が、ハルケギニアでも指折りの有力貴族であるヴァリエール家の当主に、自 分に従えと言う。 命はおろか、王家への忠義も、貴族にとり命を上回る価値を持つ名誉すら、彼に渡せと 命じている。 皆はヤンを見る。 疑念・疑惑・不信・軽蔑・怒りも含めた全ての視線が、目の前のとぼけた男に集まる。 だが、エル・ファシルの英雄は一片の迷いも恐怖も見せていない。 公爵は、重々しくバリトンの声を響かせた。 「手が、あるのだな?」 ヤンは頷く。 「極めて危険で、成功の可能性は低いです。ですが、このままでもトリステインは来月を 待つことなく亡びます。国民の多くが、戦火に死に絶えます。ならば、無為に戦端を開く よりはマシでしょう」 「そのために、われらの命と名誉を捧げよ、というのだな?我らがお前に膝を屈すれば、 トリステインの平和を守ってみせる…そういうのか?」 この言葉には、首を横に振った。 「膝を屈する必要はありません。ただ、協力して下さい。私の言うとおりに動いて下さる なら、最小限の犠牲と引き替えにハルケギニアは戦乱の業火に焼かれずに済む…かもしれ ません」 「犠牲?…わしとカリーヌか…」 「お二人だけではありません。アルビオン艦隊の侵攻はもはや止められないのです。この 点は覚悟せねばなりません。 ですが軍人以外の、別の人達があえて犠牲になることで被害を最小限に抑える事が出来 ます。ただ、この策が上手く行けば、その人達も絶望的な戦乱と、死だけは免れる可能性 を得るのです。 無論その人達も、彼等の名誉とひきかえに、ですが」 「別の…人達、だと?」 別の人達、それは誰の事か。 公爵の目は、ヤンの次の言葉を促す。 ヤンは、ハッキリと犠牲となる予定の人物を宣言した。 「マザリーニ枢機卿。そして…大后、マリアンヌ陛下」 絶句した。 ヤンを取り囲む全ての人が、息を呑んだ。 彼は、始祖より王権を授けられた、貴族が忠誠を尽くすべき王家を生贄にしろと言って いるのだ。しかも、よりにもよって、旧き貴族として仕えてきたヴァリエール公爵夫妻自 身の手で。 一瞬の空白。 公爵夫人が残像も見えぬ速さで杖を引き抜いた。 同時にシエスタが手に持っていたままのブラスターを構える。 ロングビルも杖を婦人へ向けた。 デルフリンガーはカシュッと音を立てて半ば飛びだし、自らの刃を煌めかす。 公爵夫人は、シエスタとロングビルに銃と杖を向けられても、怯む様子は見せない。 ヤンと公爵は視線をぶつけ合ったまま動かない。 ルイズは二人の男に挟まれ、視線をせわしなく左右させる。 空気が凍り付く。 「やめるのだ、カリーヌ」 公爵は妻へ視線を向けた。その目は、トリステインに殉じると語った時よりも悲壮な覚 悟に満ちているようだった。 「ですが、あなた…」 「このままなら、陛下は死ぬ。レコン・キスタに粛正されるか、アルブレヒト三世に今回 の責を問われるか…いや、アルビオン王家と同じように、貴族の名誉を穢され尽くした後 に、名も無き一兵卒の剣に倒れるだろう。そして、我ら二人も、トリステインの全ての民 も等しく、だ。 しかも、それら全てがトリステイン王家アンリエッタ姫の仕業と歴史に記される。品位 も礼節もあったものではない。もはや伝統だの、名誉や忠義に拘っていられる時ではない のだ。 ならば、賭けるしかあるまい…陛下のお命を、ハルケギニアの平和を守れるというウェ ンリーの策に、な。 なにより、この不始末の責任は、誰かが負わねばならぬ。責を負うに相応しい者が、負 わねばならんのだ」 「あなた・・・」 公爵も、そして婦人も顔を伏せる。 二人は唇を噛み締めていた。 その手は強く握りしめられている。 肩が小刻みに震えているのは、押さえきれぬ怒りと悔しさゆえだろうか。それとも己の 無力に絶望しての事か。 「ウェンリーよ、聞いての通りだ。お前の策を話すが良い」 「ご協力、感謝致します」 深々と頭を下げる。 その彼の頭に、婦人の峻烈な言葉が降ってきた。 「そこまでの大言壮語を語る以上、失敗は許しません!必ずやトリステインを、ハルケギ ニアを救いなさい!もし失敗すれば、お前も我らと共に、トリステインの土となってもら います!!」 「承知致しました、奥様」 かつて英雄と呼ばれた男は頭を上げる。そして、彼を囲む人々全てに語りかけた。 「さぁ!聞いての通りだよ。悪いけど、もしできるなら、みんなも協力して欲しい! もちろん強制はしない。なにしろ、かなり分の悪い賭だからね。おまけにスピード勝負 なんだ。既に手遅れになっている可能性だってある。 逃げる人は、急いで逃げてくれ!でも手伝ってくれる人は、この場に残って欲しい!」 「あ~に言ってんだい?今さら、まったく…」 ロングビルは、呆れたように肩をすくめた。 「ここまであんたに付いてきたんだ。最後まで付き合うよ」 横に立つシエスタも小さくガッツポーズ。 「あたしだってです!アルビオンが攻めてきたら、タルブだってただじゃ済まないんです から!サヴァリッシュ家の力を見せてあげます!」 デルフリンガーも元気にツバを鳴らした。 「オレッちはおめーの剣だぜ!好きに振るいな!」 「きゅいぃ~…お姉さま、どうするの?」 尋ねられたタバサは、相変わらず無表情に答えた。 「ヤンの監視と護衛が主たる任務。ガリアへの連行は最後の手段」 「あうう~、やっぱりい… シルフィ、お肉もらうんだから!あとで、いっぱいいっぱいお肉もらうんだからね!」 シルフィと名乗った女性は、溜息とやけくそ混じりにご褒美を要求した。うら若き美女 が報酬として大量の肉を要求する姿、かなり珍妙だ。 「ヤン・・・」 鳶色の瞳が、涙を一杯に溜めて見上げてくる。 ヤンは再びしゃがんで、ルイズと視線を合わせる。 「いいかい、ルイズ。最後に聞くよ。僕の策に、乗れるかい?」 二人の瞳が真っ直ぐに見つめ合う。 「時計の針は戻せない。トリステインも、王家も、ハルケギニアも、全てを元通りにする 方法はないんだ。 でも、泥沼の戦乱だけは回避できる可能性がある。貴族の名誉、王家への忠誠…君がい つも、ヴァリエール家の貴族として命より大事と言ってきたものを、平和のために犠牲に する事ができるかい? 命を惜しんで名を捨てれるなら、貴族の名誉より名も無き平民達の命が大事と言えるな ら、僕は、公爵夫妻を救いたいという君の願いを叶えるよ」 ルイズは、細い腕で涙を拭った。 ヤンの体から一歩身を引く。 そして腰に手を当てて胸を張った。 「分かったわよ…あんたの策に乗ってあげるわ! さぁ、あんたの主が命じるわ!この、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ ヴァリエールの命に従い・・・」 大きな声でヤンに命じようとしていたルイズだが、途中でその言葉が止まった。 真っ直ぐに自分を見下ろす使い魔を見上げながら、一瞬の迷いを見せる。 そして、すぐに迷いは消えた。腰に当てていた手を下ろし、細くしなやかな太ももの前 で手を重ねる。 そして、自分の使い魔へ、深く頭を下げた。 「ヤン、お願い!トリステインを、ハルケギニアを救って! 貴族とか、メイジとかじゃなくて、ただのルイズとしての、お願いなの! みんなを助けて下さい!お願いします!!」 ただのルイズとしての願い。 貴族の名を捨てる、ヤンの言葉を彼女なりに体現した行動。 それは、名誉を捨てるヤンの策を受け入れる覚悟。 それは、彼女の使い魔を満足させるに十分なものだった。 「オーケー!合格だよ、ルイズ」 ヤンと、顔を上げたルイズは、満面の笑みで向かい合った。 そして彼は大声を張り上げる。 「さぁ!さっきも言ったけど、この策はスピードが勝負だ!まず大急ぎで城へ戻るよ!」 と言ってヤンはタバサを見た。 タバサはシルフィと名乗った女性を杖でつついた。 「シルフィードを連れてきて」 「うぅ~、しょうがないのねぇ。呼んでくるのね」 青く長い髪の女性は、街の路地へと走っていった。 次の瞬間、突然街並みの向こうから、タバサの使い魔シルフィードが飛んできた。 青く輝く竜は広場に降り立ち、きゅいっ!と一声鳴いてヤン達に背へ上がるよう促す。 その場の全員が「バレバレだ…」と思ったが、指摘するのは気の毒だし余計な事に費や す時間がないので口にはしなかった。 こうして一行はシルフィードの背に乗り、トリステイン城へと飛び立った。 ヤンはトリステイン城へ向かう間に、彼の策を皆に説明していた。 その策に公爵も、不承不承という感じだが頷いた。 「た、確かに…もはや、戦乱を回避するにはそれしかあるまい」 公爵夫人は、その策の困難さを考えて、しきりにこめかみを押さえる。 「やると決めた以上、全力は尽くしますわ。ですが、それでも上手く行く保証はありませ んわね。どうやって説得したものやら…」 ロングビルは、既にフーケの地を晒していた。 「ま、せいぜい頑張るっきゃないね!これに失敗したら、あたしゃヤンをかっさらって逃 げるとするよ」 シエスタはブラスターを顔の前で握りしめる。 「そうは行きません!絶対成功させて、タルブに平和を取り戻して、ヤンさんと一緒に蒸 留酒を造るんです!名前は、えっと、ヤンシエスタ!…ゴロが悪いなぁ」 ルイズは、シルフィードの一番前で城を杖で指しながら立ち上がっていた。風で乾いた ピンクのドレスが旗のように翻る。 「行けー!急げーっ!絶対トリステインを救うんだからねー!」 その真後ろのタバサは、黙って城を目指している。 ヤンは、皆に策の説明を続けながら、ふと考えこむ。 「ん~?ヤンよ、やっぱ不安なのか?」 背中から尋ねてくる長剣に、ヤンは諦めたような笑いを向けた。 「いやあ、そうじゃないんだよ。結局、自分はどこへ行っても負け戦の後始末をさせられ るんだなぁ…と思ってね」 「おめぇ、苦労してんのな」 「まったくだよ。はぁ…早く引退したい。トリステインにも年金があるといいんだけど」 ここへ召喚された時に家族も、友も、兵も、地位も、信用も、何もかも失った。 全くのゼロだった。 魔法成功率ゼロだったルイズに、何もかも失ってゼロになった僕。 ゼロなメイジと、ゼロな提督。 全く、お似合いの主従だなぁ…。 そんな呑気な事を考えてる場合でもないのに、つい頭に浮かんだ言葉遊びに少し笑って しまった。 そして、ついにシルフィードは降り立った。 既に混乱を極め怒号が飛び交うがため、中庭に突然降り立った彼等を咎める者もいなく なったトリステイン王宮に。 その頃、衛星からの画像を表示する管制室でも怒号が飛んでいた。 「次回同調まで48時間…ですってぇ!?そして、気象兵器の攻撃をかいくぐって、現場 に向かって…それじゃ間に合いません!」 それはイゼルローン共和政府軍司令官、ユリアン中尉の怒号だった。 ポプランも、そして他のイゼルローン士官達も、シャフトの胸ぐらを掴もうかという勢 いで詰め寄る。 「あんた、提督の状況がわかってんのか!?どうみても戦闘状態にあるぞ!あんな無茶苦 茶な超能力者共を相手に!すぐ救助を、いや援軍を送らないと間に合わないかもしれない んだ!!」 「そ、そんな事を言われても!」 詰め寄られるシャフトは、撃墜王の怒気に押されて滝のように汗を流している。 部屋に待機する警備兵達は、既にブラスターの引き金に指をかけ、事態の推移を見守っ ていた。 立派な体格を持つ美男子が、司令官席の皇帝を見上げ、睨み付ける。 「このローゼンリッター第13代連隊長、ワルター・フォン・シェーンコップが直々に向 かうとしましょう。小型機を一機貸して下されば結構。ゲート拡大の必要もありません。 あんな泥人形の壁なぞ、華麗にすり抜けてみせよう」 「おーっと!そいつは俺の役目だ。陸戦隊の出番じゃねえぜ!」 シャフトの首を締め上げようとしていたポプランが口を挟む。今度は撃墜王と陸戦隊長 が睨みあう。 「静まれ!落ち着くのだっ!」 皇帝の声が管制室に響き渡る。人々は、その威厳を湛えた張りのある声に打たれた。一 瞬にして静寂が支配する。 「皆、忘れるな!!あのゲートは、人一人がくぐる程度の大きさしかない!ワルキューレ も通過できぬ!あれを通過出来る程度の現有の小型機では、湧き出す大地の障壁を突破出 来ぬのだ!」 その言葉に、イゼルローンの将官達は唇を噛み締める。 皇帝は、ようやくポプランの詰問から解放されて一息ついていた男を睨む。 「シャフト!そして総員に命じる。座標算定作業を一時中断せよ。ゲート拡大に全力を尽 くせ!早急にヤン・ウェンリーへ救援を送るのだ!!」 そして背後に立つ主席秘書官にも矢継ぎ早に指示を飛ばす。 「技術開発班に命じる。あの土の化け物共を突破出来る小型機を造れ!強襲降下艇の強化 も急がせよ」 伯爵令嬢の返事も待たず、ラインハルトはモニターへ視線を戻す。 そこには中庭から城内へ駆け込むヤンの姿があった。 モニターに映るヤンの姿が一瞬歪んだ。 だが、モニターの故障では無い事を皇帝は承知していた。軍服の袖で自分の目を拭い、 視界を歪ませた汗を取り除く。 「く…このような時に、また!」 フロイラインは、皇帝の白皙の頬に薄明るい赤さを帯びているのに気が付いた。 第26話 世界が変わる日 END 前ページ次ページゼロな提督
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前ページ次ページゼロのペルソナ 世界 意味…新しい世界・調和の崩壊 ルイズがワールド・ドアを発動すると銀色の鏡のようなものが現れた。 それは銀色の波を立てながら何かを吐き出していく。 発動された虚無魔法を見て、何を行っているかわからずキュルケたちは呆然とした。 しかしルイズは知っている。銀鏡は完二を呼び出したときと同じものであることを、世界と世界を繋ぐ扉だということを。 そして呼び出されたのは自分の使い魔の仲間だということも理解した。 現れたのは5人の少年少女。 彼らを見て完二たちは心底驚いたといように目を開く。 三人とも何か言いたそうであるが驚き過ぎて声も出ないという様子だ。 一人は前は空けていて白いシャツが見えるが全身が黒い服を着た少年。 その意匠は陽介と完二が着ているものと同様だ。 髪の色は灰色で、上のほうのボリュームが多く少し不恰好な印象を与えかねないが、全体として見れば不思議と悪い感じはしない。 もう一人ディテールに差異はあっても同型の服を着ている者がいた。 顔は非常に整っていて中性的な雰囲気を放っており、立ち姿から男女の区別は付け難いが男性にしては小柄だ。 残り三人の少女の内の一人はプリーツスカートに緑色の上着を合わせている。髪は短く切り揃えられ活発な印象を与える。 別の少女の着衣は同じスカートに赤いカーディガンだ。 カーディガンと同じ色のカチューシャを黒い長髪につけている。 その髪は絹のようであり、手入れが行き届いていることがわかる。 最後の一人は全体的に黒の服を着ている。 スカートであるがその意匠から陽介や呼び出された少年たちと同じ系統の服であるとわかる。 そのことから他二人の少女は自分なりにアレンジしたもので、彼女の着こなしが基本であることが推察された。 髪型はツーサイドアップで、ニーソックスを履いているのが特徴的だ。 現れた5人と完二、陽介、クマたちはそれぞれを見て呆然とし、驚き過ぎて声も出ないという様子だったが、やがて声が戻ってくると一挙に怒涛の勢いで言葉が行きかう。 「せ、センパイたちどうしてこんなトコに!?」 「は、花村!?それに完二くんたちも!?っつかここドコなのさ」 「おいおいおいおい!!どうしてお前らが出てくんだ!?ワケわかんねえぞ!?」 「あ、えっ?カンジ!あれ、なんで他にも人がテレビの中に?というかここテレビ?」 「み、みんなどうしてこの世界にこれたクマ!?」 「周りにいる人たち変な格好してるけど一体何!?ひょっとしてマヨナカテレビ!?」 ハルケギニアの住人たちは知るよしもなかったが完二たちにとってはよく見知った仲間との久しぶりの、そして不意を打った邂逅である。 その驚きは尋常ではない。 「落ち着いてください、みなさん。これでは話が進みません」 「落ち着け」 男服を着た二人が返答のない質問のぶつけ合いをやめさせようとする。 「う、ごめん」 「でも本当にここはどこなの……?」 「それはわたしが答えるわ」 異世界から呼び出した張本人であるルイズが彼らの前にでる。 「うお、魔法使いみたい……コスプレ?」 「なんかりせちゃんの声に似てない?」 「えー私の声あんなんじゃないよ」 少女たちは進みでたルイズを見て思わず口をついて出たという風だ。 ルイズの頬がピクリと動く。 「お、おい、ルイズのことをあんまそんな風に言うなって」 「完二知り合いなの?でもマントはないでしょ」 「というかお姫さまみたいなドレス着た人もいるんだけどやっぱりここってテレビの中なの?」 「いや、そうじゃなくてアレはマジでお姫さまで……」 「うるさいうるさいうるさーーい!!!」 陽介の言葉はルイズの張り上げた声でぶっつりと途絶える。 陽介だけでなくその場の全員で声を発せず会話を途絶させた少女を見る。 「アンタたちわたしが話すって言ってるのよ!黙って聞きなさい!」 少女の放つピリピリした雰囲気に当てられてさきほどまで騒がしかった少女たちは声をつぐんでいる。 「なんか久しぶりな気がするな」 「そっすね…」 こそこそと話をする2人の使い魔を睨みつけると二人は慌てて会話を止めた。 自身に注意が集まっていることを確認して、話を始めた 「この世界はハルケギニア。 わたしは由緒正しきヴァリエール家の息女のルイズ・フランソワーズ、誇り高きメイジ。 あちらにいらっしゃるのはアンリエッタさまとタバサよ! トリステインとガリアの女王であられるお方よ」 彼女の説明で理解できたものは少女達の中にはいなかったが、反論しづらい雰囲気である。 その空気の中で中性的な男装の人物が落ち着いた様子で尋ねた。 「質問いいでしょうか?」 「何かしら?」 「この世界が僕たちの世界とは違うということはわかりました。 しかしどうやって僕たちはこの世界にやってきたのでしょうか? そしてなぜ僕たちをこの世界に連れてきたのですか?」 質問しながら振り返った。その背後にあるのはまるで水銀をたらしてできた水溜りだ。 それが科学的なシロモノでないことは空中で波打ちながら存在することから一目瞭然である。 「虚無の魔法ワールド・ドアを使ったのよ。でもわたしの力だけでは出来なかったわ。 あなたがそっちから力を使ってくれたからできたことよ」 あなたというところでルイズは灰色の髪をした完二と陽介同様の黒い服を着た少年を見た。 見つめられた少年は納得したという表情をする。 「きみがこの世界から」 「ええ、わたしたちがカンジたちと、カンジたちとあなたたちの間の絆がわたしたちの力と世界を繋いだのよ」 ハルケギニアの世界の住人と別世界からハルケギニアを訪れた者の絆、 そして彼らが自分たちの世界で築いた絆が虚無の力を別世界の大きな力を繋ぎ、ワールド・ドアを開いた。 発動者である2人には理屈ではなく感覚で理解できることだが、 そうでない者たちからすればやはりこれも説明不足であり、理解できた者はいなかった。 しかしルイズに質問した人物は妥協して、それ以上同じ質問を重ねることを止めて、話を核心に向かわせる。 「ええと、とりあえず先輩がわかってるみたいですからよしとしましょう。 最も重要なことですが、なぜぼくたちをこの世界に連れてきたのですか?」 話さなければいけない。そうルイズは思った。 彼らを呼んだのはただ完二たちを元いた世界の人たちと再会させるためだけではない。 それも重要であるが、今はもっと切羽詰まった差し迫った理由がある。 「あなたたちに力を貸して欲しいからよ」 ルイズは疲労した体で腕を上げてついっと遠くを指差す。 つられて話を聞いていたものたちは振り返ってその先にあるものを見る。 数を増やし続け迫るヨルムンガント、ヴァリャーグ、火竜の軍団。 すでにエクスプロージョンで撃退した数に匹敵するほどの数がいるように見えた。 「なんつー数なの……」 「あれってシャドウ……?」 「今まで見たことないけど」 初めてその存在に気付いた者もいるようだ。 「あなたたちにあれを倒して欲しいの」 ルイズが告げた瞬間に再び視線はルイズに集中する。その目には驚愕が浮かんでいる。 突然見ず知らずの場所に呼び出されて怪物たちを倒せと言われたのだ当然過ぎる反応だ。 非常識なのはルイズも承知だが、今は彼らに頼る他ないのだ。 「お願いするわ。あなた達を頼るしかないの」 助け舟を初めに出したのは彼女の傍らに立つ完二だった。 「オレからも頼む」 そうして今まで話に加われないでいたハルケギニアの住人たちも続く。 それは君主であるアンリエッタやタバサも例外ではない。 「わたしからもお願いします。どうかこの世界を救ってください」 そういってあまつさえアンリエッタは王冠を頂くその頭を下げた。 ルイズは慌てて止めようとしたが、女王は逆に優しくルイズに諭す。 「いいえ、女王などと言っても私には何もできません。 ハルケギニアを守ることもできない私などではむしろ足りないくらいでしょう」 「アンリエッタさま……」 先ほど怒鳴られたかと思えば次は全員から改まって懇願されて戸惑うこと仕切りであった。 「わかった」 そう言ったのは灰色の髪をした少年だ。 「いいんですか?」 「仲間が頭下げてるっていうのに断れるのか、直斗?」 「その質問の仕方は卑怯ですよ」 灰色の髪をした少年がリーダー格であり、彼の意見とみな同様であるようだった。 「その代わり花村、ステーキを奢りなさいよね。ジュネスじゃなくてステーキハウスのだから」 「完二はあれ、アイリッシュクロッシェまた編んでよね。 あんまり八十稲羽に居られないから2、3日でね。もちろん、直斗くんにもよ」 「く、久慈川さん!」 「2、3日って……まあいいけどよ」 「財布空っぽになるんじゃねえの……なんか帰りたくなくなって来たんだけど……」 「ねえねえクマは?ユキコチャン、クマにして欲しいことあったらドーンとおっしゃい」 「え、クマさんに……特にないかな」 「ガーン!」 一ヶ月ぶりの再会だが彼らの間に隔たりなどない。彼らの間の絆の強さがルイズたちにもわかる。 一瞬緩んだ雰囲気は緊張感を持った。完二たちと同様多くの戦いを潜り抜けてきたことがわかる。 「戦いに行く前に疲れてるみたいだからソーマを使え」 完二、陽介、クマは渡された青いビンの薬を回しのみをした。 それを飲むと見て取れるほど回復し、陽介もカステルモールの肩を借りる必要はなくなった。 「行くぞ」 リーダーである少年が先頭を歩き、それに彼と共に召喚された少女たちが続いて敵を迎え撃つべき最前線に向かう。 「あ、アンリエッタさん。戦いに巻き込まれないように軍を下げておいてください。あと一応そのルイズが出した銀色に誰も触らないように」 陽介、それに完二とクマも同じ世界の仲間たちと共に行こうとする。 「アンリエッタさまはヨースケの言うように軍を指揮して退かせて下さい」 ハルケギニアの命運を預けた少年たちを見送っていた女王は話しかけてきた彼女の家臣を見る。 「あなたはどうするの」 ルイズも先ほどまでアンリエッタが見ていた同じ背中を見る。違うことはそれは見送ろうとする目ではないことだ。 「わたしはカンジたちと行きます。行っても出来ることはないかもしれませんが……」 アンリエッタは溜め息のような小さな吐息をこぼす 「あなたを置いていけないと言ったのに、わたしはルイズを見送らないといけないのですね……」 「う……そ、それは申し訳ありません…」 幼馴染の困った顔に伏せた顔を上げて笑って見せる。 「お行きなさいルイズ。あなたは虚無の使い手で……あの人の主なのでしょう?」 尊敬する君主の言葉にルイズも強い意思を持って答える。 「はい!」 そして付いて行こうとするのは陽介とクマの主である2人の少女も同じだった。 「さ、わたしたちも行きましょう、タバサ」 タバサはこくりと頷く。 慌ててカステルモールが止める。 「何も陛下が向かう必要はないのではないでしょうか?」 真っ当すぎる質問にタバサは彼女らしからぬ答えを返す。 「行きたいから」 必要だから、その方が良いからではなく、行きたいという単純な重い。 抑圧された彼女の騎士団時代をよく知るカステルモールに反対できるはずもなかった。 「ヨースケ殿がいらっしゃれば間違いはないと思いますが……どうかお気をつけて」 「カステルモールも軍の後退を手伝って」 はいと忠臣は女王の命を受ける。 「何してんだルイズ、おっせーぞ」 「タバサも速く来いよ」 「置いてっちゃうクマよ~?」 使い魔たちが主を呼ぶ。なぜいつも傍らにいる彼女たちが付いてこないのかを不思議だというように、ごく自然な言葉だった。 「うるさいわね!というかアンタは使い魔なんだから待ちなさいよね!」 ルイズは完二の、キュルケはクマの、タバサは陽介の隣に行く。 彼女たちは、彼らは並んで歩いた。 ジョゼフは新たに呼び出したヴィンダールヴこと火竜の背に乗っていた。 彼の眼下には砂漠が広がるばかりでそこには銀色に光る召喚の扉も、彼の使い魔たちの姿も見えない。 ジョゼフは巨大な火竜の背中に両足をしっかりと立て、使い魔たちが向かった方向をじっと見ていた。 いや、正しく言うなら彼は使い魔と同じ光景を見ていた。 ミョズニトニルンとガンダールヴの視線の先に立つのは彼らの進行方向に立ちふさがるように存在する11人の少年少女の姿。 知っている者もいたが直接顔を見ることは考えてみればほとんど初めてであった。 その大半はこの世界の人間でないことはその格好からすぐにわかる。 そして彼らの力が圧倒的であることは彼の力と、何より現状が教えている。 視線の先には少年少女が立つだけだが、視界はほとんど倒れ伏した使い魔たちで埋め尽くされていた。 空間を振るわせる大爆発がジョゼフの使い魔たちが吹き飛ばし、灼熱の炎がヴァリヤーグを枯れ葉のように焼く。 隕石が降り注ぎ空を飛ぶ竜を地面へと叩きつける。それは地上のヴァリヤーグも、砲弾すら弾く固い装甲を持つヨルムンガンドすらも打ち据える。 地面に表れる黒や白の魔方陣はその上に立つ、また飛んでいる命を静かにこの世ならざる場所へ連れ去った。 雷が轟き、疾風が走る。空を飛ぶ火竜は氷に囚われる。 終わりだ。ジョゼフは静かに自分の敗北を理解した。 万を数えた彼の使い魔は著しい速さで数を減らしていた。 減った数でも小国の一つや二つを滅ぼせる力はあるが、目の前の強大な力の前には何の意味もなさないだろう。 それにその数はすぐに0に近づく。 ジョゼフがコートから火石を取り出すと、やはり火竜の背に乗らず浮遊していたビダーシャルがそれを見咎めた。 「何をするつもりだ」 ジョゼフはこの場の同席者であったビダーシャルの存在を思い出した。 「なんだ、まだいたのか。早く消えることだな。おれはお前などと心中するつもりはない」 ビダーシャルは何か言いたげであったが、ジョゼフのわずらわしそうな顔を見て、意見も飲み込みジョゼフの言った通りに姿をさっさと消してしまった。 優れたエルフの戦死は見ることはできずとも彼の敵視する三種の怪物たちがどのような末路を辿ったのか分かっていた。 ジョゼフはビダーシャルが去ったかどうかに構うことなく詠唱を始める。 エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンクサ ジョゼフの体の中をリズムが巡っている。魔法使いが自分の系統魔法を唱えるときに覚える感覚だ。 ジョゼフが初めてこの感覚を覚えたのはいつのことだったか。小さいころから劣った兄として優れた弟に劣等感を覚え続けてきた。 だが落ちこぼれの彼に目覚めた伝説の力は彼を満たすものではなかった。初めて唱えたときもそうであったし、最後の詠唱のときもそうだ。 オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド ジョゼフは負けを悟り、死を選んでも彼の心に波の一つも立たなかった。 わかっていたのだ。たとえ世界をもて遊んでも、滅ぼしても、エルフたちに殺されようともそんなものは彼に何も与えてくれないということは。 誰よりも憎み、妬み、そして羨望した最愛の弟の姿を思い浮かべる。 ――なあシャルル、オレはどうすればよかったんだろうな―― エクスプロージョンが火石の装甲を剥ぎ取り、火石に蓄えられた力が解放された。 最後のジョゼフの使い魔が倒されたとき、空気の震えと爆音をルイズたちは感じた。 地平の果てから太陽が見えるように半円を見せているのは、火石の爆発に相違なかった。 実際にその脅威を目の前にしたことのあるルイズたちは恐ろしい光景が脳裏に甦った。 だがその恐ろしい爆発はルイズたちを襲うことなく、地平から半円の姿を見せた後に、それをピークとして収束を始めた。 みな何が起こったか理解できない中で、ルイズがポツリと告げた。 「ジョゼフが死んだわ……」 ルイズの虚無の力がもう一つの虚無の力の消失を知らせていた。目の前で起こった爆発に担い手は消え去ったのだ。 全員が爆発の起きた方向を見ている中でタバサは陽介の手を握った。 陽介は驚いた顔をしてタバサを見たがすぐに彼女と同じ方向に顔を向けた。 それから陽介も強く手を握り返した。 前ページ次ページゼロのペルソナ
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食事は特に何事もなく済んだ。 アルヴィーズの食堂の銅像は動くらしい、ぜひみてみたいモノだ。 食堂に入った途端に視線がぼくらに向くが、ルイズはそれら全てを軽やかにスルーした。 当然ぼくもそれに習ってスルーする。 「引いて」 「それくらい自分でやれ」 と言いながらも椅子を引いて座らせてやる。 テーブルはとてつもなくでかい、百人がけくらいのテーブルか。 まぁ食堂のテーブルだとこんなもんかと思いながら厨房へ向かう。 「赤ん坊と一緒に何かもらってくるよ」 何か言い足そうにしているルイズに気付かないふりをした。 どうせ主としての威厳を保つために小細工でもしようとしたのだろう。 しかしそんな事はぼくにはお見通しだ。 この岸辺 露伴容赦せんっ! 壇上で教鞭を執っている中年女性はシュヴルーズと言うらしい。 土のトライアングルメイジ。トライアングルは属性を三つ足すことが出来るメイジとのことだ。 最初にルイズを読んだときにそんなことを書いてあったことを思い出す。 ちなみにぼくの御主人は一つも足せない、故に「ゼロ」だと言うことは既に把握している。 そのため、あのデブが言ってたゼロの意味を今更訊くことはしない。 無駄だからな。 魔法を使おうとすると爆発するらしい。まるで吉良だな。 シュヴルーズが小石を教卓の上に置いて杖を振るうと、石ころがキラキラと輝く金属へと変化した。 おぉ、素晴らしい。それが錬金か、興味深い。 ん? キュルケがその金色を見て乗り出して「ゴールドか」と訊いている、俗物か。 キュルケの問いにシュヴルーズは真鍮だと応える。 どうやら金はスクウェアでないと出来ないらしい。 その辺りは少々詳しく問いつめたいな。 合金である真鍮は可能で、単一元素金属である金へは出来ない理由が不明瞭だ。 貴金属だからとか価値が高いとか希少だからと言った理屈はぼくら人間による感覚でしかない。 物質としてみるならば全てはすべからく同一の価値であるはずなのだから。 モノの価値は人が見出すモノである。それはどんなモノでも一緒だと思う。 シュヴルーズがルイズを指名して前に出て錬金するようにいった。 当然全員恐怖におののく。爆発するのだから仕方ないだろう。 「やります、やらせてください!」 キュルケが説得したが逆効果になったようだ。ルイズは半ば意地になって席を立ち、階段を下りていく。 生徒達がみんな一斉に机の下に隠れだす、ぼくもそろそろ避難しておこうか。 ふと、一際大きな杖を持った少女が人知れず外へ出て行くのが見えた。 そうだな、外が一番安全だろう。 それに、一人だけ出ていくなら本にするチャンスだ、ぜひ読ませてもらおう。 『ヘブンズ・ドアーーーッ。自身と露伴を透明にする!』 腕の中の赤ん坊に、そう書き込んだ。 赤ん坊のスタンド。『アクトン・ベイビー』はモノを透明、厳密に言えば不可視化させるスタンドだ。 その効果範囲は自分中心。されどその効果範囲はストレスや緊張で広がったと、ジョースターさんや仗助は言っていた。 ならば、ぼくの体まで範囲にすることが可能だと思っていたが、予想はばっちりだった。 赤ん坊故に制御できないスタンドだ。 こちらの世界に飛ばした時も、赤ん坊は自分の体だけ範囲にしていた。 一緒にいたのがぼくでほんとうに良かったと思う。ただ一言、赤ん坊に『スタンド能力を使えない』と書き込むだけで十分だからな。 一旦『透明になっても岸辺露伴には見えるようにする』と書こうかと思ったが。他の人に見えなくて巻き添えを食らったりしたら大変だから断念した。 そう、丁度背後から聞こえる爆発音なんかに巻き込まれたりしたら、ね。 それにしても少女はどこへ行こうというのだろうか。 見えない状態になったまま、後を付ける。 床は石造りなため、足音がコツコツと響く。 時折少女は背後を振り返って怪訝そうに振り返る。 なかなか気配に敏感みたいだ、それとも靴音が聞こえるのだろうか。 しかし腕に赤ん坊を抱いているから靴を脱ぐ訳にもいかない。 コツ、コツ、コツ、コツ、コツ。 コツ、コツ、コツ、コツ、コツ。 それにしてもずいぶん大きい杖だ、しかしそれでこそ魔法使いと言った風情がある。 コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ。 コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ。 おっと、考え事をしてしまった所為で止まるのが一歩おくれてしまった。 タバサは、図書館へ向かっていた。 あのヴァリエールの魔法が失敗するは自明の理、至近距離で爆発を喰らえばあの先生はただでは済まないだろう。 それに教室も同じく、残りの授業なんて出来るはずもなく中止になるはずだ。 ならばあの場に留まっている必要もなく、図書館で自習をしようと、教室を出たのだが。 なんだかおかしい。 立ち止まって背後に振り返るが、聞こえてくるのは爆発の残響だけ。 案の定ヴァリエールは失敗したようだ。しかしその事は今はどうでも良い。 何かがおかしい。何か足音が妙に響いているような気がする。 普段はこんなに響いている記憶はないのだが、気にしすぎだろうか。 今通った道を凝視するが、何も見えない。 やはり気のせいのようだ。 タバサはそう納得して再び歩き出す。 しばらく歩いたが、やっぱりおかしい。 ピタリと止まった、その時、違和感は現実となって襲ってきた。 コツ。と足音が一つ、多く…………。 「どこいったのよあいつはっ!」 メメタァに破壊された教室を、一人で片付けているのは我らがルイズ・ド・ラ・ヴァリエールである。 錬金の失敗によって破壊された教室を片付けるように言われた。 もちろん魔法を使わずに、とのことだが元々魔法の使えないルイズにはそんな制約はなんの意味もない。 が、一人でやるとなったら話は別だ。 気付いたら露伴がいなくなっていたのだ。席を立って教卓の前に行くまでは確実にいたはずなのに。 「どこいったのよあいつはっ、もーーーー。もーーーーーっ。もーーーーーーっ!」 地団駄を踏むが、いないモノはいないのだからしょうがない。 片付け完了が長引くだけだ、ルイズもそれを理解しているのだろうが、ヒートアップとクールダウンを繰り返している。 「どこ行ったのよあいつはーーーーーーっ!」 ルイズの叫びは、教室の壁に虚しく吸い込まれた。 「なるほど、図書館か」 突然背後から聞こえてきた声に、柄にもなくタバサは飛び退いて杖を構えた。 構えた先にいたのは、赤ん坊を抱いた露伴。 その姿を認めると、杖を引いた。 「いや、教室を出て行くところが見えたので少々気になってね。悪いけど尾行けさせてもらったんだ」 「……貴方は……」 「岸辺 露伴だ。一応ルイズの使い魔と言うことになっている。こっちは静・ジョースター」 露伴がそう紹介すると、静はタイミング良く「きゃは」と笑った。 「………何か用」 「? 君は何を言っているんだ。理由はさっき言ったじゃないか」 露伴が変なモノを見るような目でタバサに返す。 要するに用はない。 「……どうやって」 タバサは、露伴がどうやって隠れて後を付けてきたのかが気になった。 しかしタバサのその質問を無視しつつ、その腕の静をタバサに押しつけて本を抜き取った。 あいた左手で本を開き、右手でペラペラとページをめくる。 しかし、その瞳は読んでいるようには全く見えず。ただ流しているだけに見えた。実際その通りだが。 「読めないな……言葉が通じているのに文字は読めない。謎だな、召喚魔法にその辺りの理由があるのか………」 「質問に答え……」 『ヘブンズ・ドアァーーーーッ!』 タバサの腕から静を返してもらいながら、露伴はチカラを発動する。 能力の発動とともに、タバサの全身が弛緩し崩れ落ちた。 タバサが崩れ落ちる音は静寂な図書館に割合大きな音を響かせた。 司書の教員や、自習をしていた生徒達からの視線が注がれる。 「いや、なんでもない。ちょっと立ちくらみしたみたいだ」 露伴がそう言うと、ソレで納得したように生徒達は再び勉強に向かう。 「さて」 一番近くの椅子を引いて、そこにタバサを座らせる。 しかしその体に力は入っている様子はなく、だらりとした手の平からは杖が床に転がった。 静をそのテーブルの上に寝転がせ、タバサの杖を右手で持ち、 露伴はゆっくりとページを開いた。
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662 名前: タバサはあなたの使い魔ですっ!(1/2) 投稿日: 2007/11/18(日) 23 35 27 ID umR4vqia ダエグの曜日の昼下がり。 ルイズとサイトは部屋の中でくつろいでいた。 トントン――部屋の扉からノックの音が聞こえてきた。 「だれ?」 ルイズが誰何すると、二人の良く知る声がした。 「タバサ」 ルイズはアンロックを唱え扉を開錠し、サイトが扉を開けた。 タバサがすっと部屋へ入ってきた。 そして、サイトの前で立ち止まると間髪いれずに話を切り出した。 「あなたに話がある」 ルイズはその光景にただならぬ空気を感じた。 「いきなり何を言い出すのよ!」 タバサは彼女をちらっと横目で見て、再び同じ言葉を繰り返した。 「サイトに話がある」 ルイズはあわててサイトのそばに駆け寄ると彼の腕に手を絡ませた。 「わたしのサイトに何の用なのよ!」 タバサは眉を寄せ短く返す。 「ルイズには関係ない――」 突然、タバサは爪先立ってサイトとの距離をつめた。 当のサイトもそばにいたルイズも何が起こったのかすぐには分からなかった。 「え?タバサ今なにを――」 サイトは狼狽して2、3歩後ずさる。 ルイズは目を吊り上げて金切り声を上げた。 「きききききキスですってぇ〜〜!!!!!」 タバサはサイトを見つめたままこういったのだ。 彼の目にはタバサのほほが極薄く朱色に染まっているように見えた。 「わたしはあなたの使い魔」 ばしんっ。ルイズは思いっきりサイトの後頭部を鞭で叩きつけるのだった。 渾身の一撃に彼は前によろけてしまう。そして目の前のタバサに抱きつくような形に飛び込んでしまったのだ。 思わぬ不可抗力にタバサは誰からみても分かるくらいにほほを朱に染めた。 自分の一撃から生じた不可抗力でも許せない状態にあるサイトにルイズは背後から股間へ右足をけり込んだのだった。 ぐひゃぁっ。脂汗を一瞬にして顔じゅうに滲ませて、彼はひざから崩れ落ちた。 ルイズは彼の背に踏み込んだ左足をどかりと乗せて、タバサに詰め寄った。 「ああああんたね。こいつはわたしの使い魔なんだから。 てゆーか使い魔の分際で使い魔を持つなんてきーたことないわよっ!」 「そんなの関係ない。私はサイトに助けてもらった。だから私は彼を守ると決めた。 理由は問わない。私は彼の使い魔になる」 「だめだめだめ。そんなのだめなんだからっ。こいつはわたしのっ――わたしのなんだから」 ルイズは思いっきり叫んだ。 「それでも私は退くつもりはない」 そう言い放つと、タバサはまだ床に転がっているサイトにいたわる様な眼差しを送った。 そして彼の傍にしゃがみこんでつぶやいた。 「私はあなたをかならず守る。でもごほうびが必要。ごほうびは私からあとでお願いする」 そういい残してタバサは部屋から出て行ったのだった。 663 名前: タバサはあなたの使い魔ですっ!(2/2) [sage] 投稿日: 2007/11/18(日) 23 36 37 ID umR4vqia その夜。 今日の一件で随分駄々をこねていたルイズがやっと寝付いてくれた。 一方サイトは今日のタバサの一言で悶々として頭が冴えてしまっていた。 いつものようにルイズはサイトの肩に頭を乗っけてすやすや寝息をたてている。 すると部屋の窓に月明かりに照らされた大きな影が映った。 サイトは真顔になって、そっと彼女の頭を枕にもどしてやってから身を起こす。 そして素早くデルフを握り締めて窓に向かって構えた。 しかし、その影の主は意外な生き物だった―― 「きゅいきゅい。ココをはやくあけるのね〜」 タバサの使い魔、シルフィである。 彼は胸をなでおろして部屋の窓を開けた。 さわっとした涼やかな風が入ってきた。 「シルフィ、どうしたんだよ。こんな時間に?」 「おねーさまのとこに行くのねっ。きゅいきゅい」 そういってシルフィは背中を向けた。 シルフィの背に乗ったサイトは夜空へ誘われた。 空中で大きく旋回して学院の一室へと舞い降りた。 そこには、パジャマ姿の青髪の少女が待っていたのだった。 「タバサ。そんな格好ってもう寝るんじゃないのか? なんで俺呼んだんだよ?」 サイトは彼女に聞く。 すると彼女は一言、だから。と答えた。 「『だから』ってどゆこと?」 鈍感な彼は首をひねった。 「ごほうびは『私と一緒に寝る』こと」 そう言うと、タバサは彼の手首をつかんで自分のベットへ連れて行ったのだった。 彼女はベットに横になると、自分の隣の空いたところを左手でポンポンと叩いた。 「ここに寝て」 その一言にサイトは体が凍りついたように固まった。 「えと・・・たばささん?いま、なんておっしゃいました?」 「ここに寝て」彼女は繰り返す。 「だれが?」 「あなたが」彼女はサイトを指差して答える。 「だれと?」 「私と」彼女は今度は自分を指をさす。 「どして?」 「ごほうび」彼女の頬がうっすら染まった。 「はーやーくー。シてあげるのね♪きゅいき・・・」 ゴッ。タバサの杖がシルフィの脳天に刺さった。 「邪魔。外へ」 彼女は窓の外を指差して命令する。 「いったいのね〜。ひどいのね〜」 そう言い残し、シルフィは外へ飛び出した。 そして、彼女はサイトに向き直り、ベットの上にちょこんと正座すると はやく。と一言いった。 166 名前: タバサはあなたの使い魔ですっ! [sage] 投稿日: 2007/11/25(日) 23 20 17 ID jO72RQWq サイトはおそるおそるタバサの正面で正座になった。 タバサはじぃーっと彼を凝視していた。彼が自分の目の前に正座すると タバサはそのままの形でぱたんと横に倒れこんだ。 そして、サイトに毛布をかけて、とお願いするのだった。 いきなりタバサが横倒しになった。 大丈夫か?と声をかけようとするのと同時に 「毛布をかけて」 と彼女が言ってきたのだ。 俺は彼女に毛布をかけてあげる。 すると、今度は 「眼鏡とって」という声がする。 タバサがすっと碧い瞳を閉じた。 両手をそーっと彼女のこめかみまでもっていって眼鏡のつるを摘む。 そして、耳につるの端っこがひっかからないようにちょっと上げ、ゆっくりと眼鏡を持ち上げた。 はずした眼鏡のつるを重ねて彼女の枕元に置いた。 眼鏡が取り払われた彼女の裸眼は新鮮な印象だ。 彼女の双眸がまたゆっくりと開かれた。 レンズ越しではない透き通るような碧眼がサイトの目の前にあった。 彼はその碧色に吸い込まれるように魅入っていると、その瞳の持ち主に手をつかまれたのだった。 「サイト、どうしてじっと私をみているの」 俺は我に返ってタバサの顔を改めて見た。 「い、いや、タバサの目を直にみたの初めてだったから――なんてかさ、『きれーだな』って」 感じたままを口に出した。すると、タバサは俺から少し目線をずらし、うっすらと笑みをたたえながら 「そう」 とだけつぶやいた。そして、再び俺と視線を合わせると 「早く横になって」 と催促されてしまった。 サイトは横になったが、タバサは不満顔であった。 「いっしょに毛布に入る」 彼は、彼女がくるまっている毛布には入ってなかったのである。 「で、でも・・・それはまずいんじゃ・・・」 サイトはやんわりと拒む。 彼女はそんな彼に眉間に少ししわを寄せた顔をずいと近づいて、 鼻と鼻がくっつくくらいまで接近してきた。 「ごほうび」 そう一言こぼすと彼女は毛布を彼に向かってがばっと開けた。
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編集 ゼロの使い魔 on the radio 第11回~第20回までのキーワード ←キーワード 第11回 ゲスト「キュルケ役」井上奈々子さん登場!(2006年8月18日) [部分編集] OP小芝居 『ルイズ:ツッコミLv2』(扇ぐ、ルイズツッコミ) OP(はやっ) 魔法学院 応接室(ゲスト:井上奈々子) 曲[TVアニメ「ゼロの使い魔」主題歌「First kiss」] 魔法学院 宝物庫[テーマ:懐中電灯](タイトルコール:井上ちゃんに手伝って貰った) 曲[TVアニメ「ゼロの使い魔」エンディングテーマ「ホントノキモチ」] 貴族と平民(暑いとき、魚を買うとき、老後、食事で椅子を引いてもらうとき、こけた時、ペットの服) (3万人のリスナー、マイナスイオン、肝試し、ヨークシャテリア、) 第12回 日野ちゃまを”かませたい”対決メール(2006年8月25日) [部分編集] OP小芝居『サイト:洗濯Lv5』 OP(東京特許許可局長今日急遽休暇許可拒否、ルイズいる) 魔法学院 掲示板[日野ちゃまの勝手に女性キャラ人気ランキング結果発表♪](シエスタが出ちゃったよ、エロイぞ) 曲[ゼロの使い魔キャラクターCD ルイズ&才人編「Follow Me!!」] 曲感想 魔法学院 宝物庫[テーマ:懐中電灯](タイトルコール:プーさん風) 曲[TVアニメ「ゼロの使い魔」エンディングテーマ「ホントノキモチ」] 貴族と平民(プール、海外旅行、立ち入り禁止の世界遺産、金縛り、お化け屋敷、お風呂の残り湯) (バカジャナイヨ、日野フラッシュ、ミコノス島、世界の車窓から、情熱大陸、幽体離脱、) 第13回 またまた日野ちゃまを「かませる」メールでいっぱい!(2006年9月1日) [部分編集] OP小芝居『ルイズとサイトとなぞかけ』 OP(ミコノス島、キュルケのフルネーム) 魔法学院 購買部(ゼロの使い魔DVD第一巻) 曲[ゼロの使い魔キャラクターCD2 ギーシュ モンモランシー編「薔薇のプライド」] 曲感想 魔法学院 宝物庫[テーマ:炊飯器](タイトルコール:気持ち悪いおじさん風) 曲[TVアニメ「ゼロの使い魔」エンディングテーマ「ホントノキモチ」] 貴族と平民(コンビニで払うとき、寝るときの服装、シャンプー、働かずに暮らして、) (ジャパン、あいうえお、) 第14回 かみかみ現象「小芝居コーナー」にも波及・・・(2006年9月8日) [部分編集] OP小芝居『ルイズとサイトと剣の鍛錬1』 OP(ゼロの使い魔感想) ヴェストリの広場(ルイズいざ伊豆へ、サイト野菜とさとる、居酒屋でイザコザ、映画化、ドラマ化、スキップ、ぽんぽこ) 曲[ゼロの使い魔キャラクターCD3 タバサ キュルケ編「あなたしか欲しくない」] 魔法学院 宝物庫[テーマ:炊飯器](タイトルコール:ロボット風) 曲[TVアニメ「ゼロの使い魔」エンディングテーマ「ホントノキモチ」] 貴族と平民(道を歩いているとき、高い買い物をしたとき、水族館、宝くじ、ケーキ、) (彦摩呂、ごくう、長州小力、カニ、クリオネ、クラゲ、) 第15回 もうこれしか書かないヨ「がんばれ!日野ちゃま!」(2006年9月15日) [部分編集] OP小芝居『ルイズの恩返し』 OP(早口言葉) 魔法学院 会議室[議題:ゲーム ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲] 曲[ゲーム ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲 主題歌「Treasure」(歌 ICHIKO)] 魔法学院 宝物庫[テーマ:デジタルカメラ](タイトルコール:ノリノリな感じで) 曲[ゼロの使い魔 キャラクターCD4 シエスタ アンリエッタ編「誓いのアリア 」] 貴族と平民(楽器、輪ゴム、カレー・スプーン、3LDK、噛んだりいい間違えたとき、駄洒落、なになにの秋) 第16回 消え物コーナー日野ちゃま「バ○ナ+マ○ネーズ」(2006年9月22日) [部分編集] OP小芝居『灯台下暗し』 ヴェストリの広場(高速増殖炉もんじゅ、バナナ・マヨネーズ) 曲[ゼロの使い魔キャラクターCD3 タバサ キュルケ編「翼」] 魔法学院 宝物庫[テーマ:タクシー](タイトルコール:ルパン風) 曲[ゼロの使い魔キャラクターCD4 シエスタ アンリエッタ編「瞳の中の夕焼け~My truth~」] 貴族と平民(週刊誌、キュルケの誘惑、おまけ付・大人買い、シャワー浴びるとき・oh yesyes、エビフライ・尻尾、女の子を口説くとき・くさいセリフ) (ままごとトントン、シャンプー、ギーシュ、古典、ごつかれさん) 第17回 とうとう最終回!「オープニング小芝居」は凄いぞ(2006年9月29日) [部分編集] OP小芝居『俺がルイズで、ルイズが俺で』 ルイズのお部屋 「クイズ!正解は釘宮理恵 リターンズ!」(賞品:烏骨鶏プリン(1260円)) 曲[TVアニメ「ゼロの使い魔」主題歌「First kiss」] 魔法学院 宝物庫[テーマ:タクシー](タイトルコール:爽やかかつ元気いっぱいに) 曲[TVアニメ「ゼロの使い魔」エンディングテーマ「ホントノキモチ」] 貴族と平民(カレー、パチンコ、文庫本、チキンラーメン、お酒&お風呂、焼き芋・落とし穴) (焼肉食べたいな、ランナウェイ、お酢、) 第18回 ゼロラジオが”冬”スペシャルで帰ってきた!!(2006年12月27日) [部分編集] OP小芝居 『ルイズとサイトと惚れ薬』 ルイズのお部屋 「クイズ!正解は釘宮理恵2006」(賞品:あまおう) 曲[TVアニメ「ゼロの使い魔」主題歌「First kiss」] 貴族と平民(睡眠&授業、ゆで卵、ハンバーガー、ペット、ステーキ、ナタデココで) 曲[TVアニメ「ゼロの使い魔」エンディングテーマ「ホントノキモチ」] (第1回を全て聞いたユニーク数は89264、バリューセット、) 第19回 復活2回目!息のあった(?)トークをお聴き逃し無く!(2007年1月27日) [部分編集] OP小芝居『ルイズとサイトとお正月』 OP[二人の抱負](一心不乱、先手必勝、好きな人、ヤマグチノボルからメッセージ、) ヴェストリの広場(最近は待って抜け出せないこと、噛み噛み回数、) 曲[ゲーム ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲 主題歌「Treasure」(歌 ICHIKO)] 言葉の魔法(魔術師手術中、この杭の釘は引き抜きにくい、隣の客は良く蟹食う客だ or 隣の蟹は良く客食う蟹だ) 貴族と平民(珍味、間食、賞味期限、自動販売機、しおり) (歯の矯正、宣戦布告、) 第20回 早口言葉。今回の日野ちゃまは冴えているゾ!(2007年2月27日) [部分編集] OP小芝居『ルイズとサイトと闇鍋』(ルイズ役:釘宮理恵、サイト役:日野聡) ヴェストリの広場(暇・お茶でもしませんか、結婚、シンプルイズベスト、わっしょい、マッシュとマロンの名前の由来) 言葉の魔法(バスガス爆発(バスが酢爆発)、主要商社出張詳細調査書、生々しい生麦 生々しい生米 生々しい生卵) 貴族と平民(500玉貯金、お米、お寿司、コンビニ) (暖かい、ホワイトデー、チョコとかやってない、レバ刺し、お寿司食べさせてください、散歩、歩く、どんどん太ってるよ、)